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相続相談 47 遺言執行者の権限

2012年8月27日

テーマ:相続相談

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

Q 遺言書に、遺言執行者が財産を売却処分することができる記載があれば、相続人が反対しても、遺言執行者は財産を売却処分することができるのですか?

A できます。
1  遺言の執行に必要な一切の行為ができる
「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」(民法1012条①)ことになっていますので、遺言書の中に、遺言執行者に財産の処分を委任している旨の言葉があれば、遺言執行者は財産の処分ができるのです。

2具体的には
⑴管理権
・相続人に対する財産の処分禁止の仮処分申立権(最判昭30.5.109)
・債権の取立権(大決昭2.9.10)
・財産の引渡請求権
・居住相続人に対し使用借権の解約告知をして、遺産である建物の明渡しを求める権利(東京地判昭42.9.16)
・ 遺言の内容と異なる相続登記がなされているときの抹消登記手続等の請求権(最判平11.12.16)。

⑵処分権
・財産を売却換価する権利
・債権譲渡や相殺をする権利
・和解契約の締結をする権利

3 問題⑴
Q 遺言執行者に遺留分減殺請求を受領する権限はあるか?
A 大判昭13.2.26は、包括遺贈の場合に限って遺言執行者に対して遺留分減殺請求ができると判示していますが、特定遺贈の場合も可能だとする見解もあります(注釈民法(28)333ページ参照)。
注意すべきは、単純な遺産分割方法の指定の遺言だけの場合は、遺言執行者の指定があるからといって、遺言執行者には遺留分減殺請求の受領権限はありません。これを間違うと、遺留分減殺請求権が時効で消滅してしまう危険があります。

3問題⑵
Q 遺言執行者は訴訟で当事者になり得るか(当事者適格を有するか)?
⑴ 受遺者は、遺言執行者に対し、遺贈不動産につき、所有権移転登記手続の請求訴訟を提起しうる。なお、遺言執行者がいる場合、相続人に対しては請求できない(最判昭43.5.31)。
⑵ 遺言無効確認の訴えについては遺言執行者が被告になる(最判昭31.9.18)。
⑶ 相続人や第三者が、遺贈財産について権利の存否を争う場合も、遺言執行者が被告になる(東京地判大3.3.6)。
⑷ 相続人が、すでに履行がなされた遺贈の無効を主張して、遺贈財産の返還を求める訴訟の被告は、受遺者であって、遺言執行者ではない(最判昭51.7.19)。
⑸ 遺贈の目的物が相続人又は第三者の名義である場合は、その権利の存否確認や所有権移転登記の抹消登記を求める訴訟は、遺言執行者が原告となる(大判昭15.12.20)。
⑹ 遺産分割方法の指定によって相続人が取得した土地について、借地権確認訴訟を起こす者は、遺言執行者ではなく、当該相続人を被告として起こすべきことになる(最判平10.2.27)。

以上要するに、遺言執行者は、遺言から読み取ることのできる遺言者の意思を実現するために、訴訟での当事者適格を有するということです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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