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相続相談 48 会社名義の財産を相続人に分け与える方法

2012年8月28日

テーマ:相続相談

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

Q 私は自分で100%の株式を保有して、株式会社を経営している者ですが、遺言で、会社名義になっている財産を子供達に分け与えたいのですが、できますか?

A そのままではできません。会社名義の財産は会社が所有している財産ですので、あなたには処分権はないからです。
しかし、会社を解散させ、会社財産を残余財産として、あなたが分配請求できる段階に至れば可能です。
1会社の解散
会社法471条は、株主総会の決議で株式会社の解散ができることを定めています。会社の解散決議をすると、会社は同法475条で、清算しなければなりません。この段階で会社は「清算株式会社」といわれます。なお解散決議は、同法309条2項11号の特別決議すなわち議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の2/3以上に当たる多数による決議によってなさなければなりませんが、あなたの場合は100%の株式を有しているので問題はないでしょう。

2 清算
解散決議後の清算人は、清算株式会社の取締役、定款で定める者、株主総会の決議によって選任された者ですので、解散決議をするとき清算人の選任決議をしておくと便利です。あなた自身が清算人になるか、遺言執行者に清算人になってもらうと良いでしょう。
清算人は、財産目録を等を作成し(同法492条)、①現務の結了、②債権の取立て及び債務の弁済、③残余財産の分配の職務を、その順で行います(同法481条)。
清算人は、清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、直ちに破産手続開始の申立てをしなければなりません(同法484条1項)が、そうでない場合は、株主に対し、残余財産の分配が出来ます。
むろん、残余財産の分配をする前には、会社債務をすべて弁済しておかなければなりませんので、財産の一部を売却して弁済原資を確保しておくことも職務の内容になります。

3 残余財産の分配
残余財産の分配は、清算人において、次の事項を定めた上で行います(同法504条)。
①残余財産の種類
②株主に対する残余財産の割当てに関する事項
あなたの場合は、株主はあなた1人ということですので、残余財産のすべてをあなたに取得させる内容になるはずです。
なお、株主は、残余財産が金銭以外の財産であるときは、金銭分配請求権(当該残余財産に代えて金銭を交付することを清算株式会社に対して請求する権利をいう。)を有していますが、むろん、残余財産を現物のまま分配してもらうことも可能です。あなたの場合は現物を請求できることの方がよいでしょう。

4清算手続が完了した段階での遺言の内容
あなたの場合、会社の解散と清算手続が進み、会社法504条にいう、株主に対する残余財産の割当てに関する事項を決定した後なら、あなたが残余財産として分配を受ける財産が特定できているので、通常の「相続させる」旨の遺言事項で相続人に相続させることは可能です。

5解散手続をする前の遺言事項
遺言者において、法的に会社を解散することが可能なだけの株式を有している場合で、遺言書作成時においては、会社が解散していないときは、
例えば、
「一項私は、私が発行済み株式総数の全部を有している○○産業株式会社の株式の1/2を妻花子に、1/4を長男一郎に、1/4を長女一子に遺贈する。ただし、妻、一郎、一子は、遺言執行者A弁護士を代理人として○○産業株式会社を解散し、同弁護士を清算人にすること、及び清算人より次項の残余財産の分配を受けること
「二項遺言執行者A弁護士は、本遺言の効力が生じた時は可及的速やかに、前項ただし書きに基づき、妻、一郎、一子から委任を受けて○○産業の解散決議をなし、清算人として清算事務を行い、残余財産として、下記⑴の財産を妻花子に、⑵の財産を長男一郎に、⑶の財産を長女一子に、各配分すること。」
という遺言書を書けばよいでしょう。
ただし、この場合、相続人の協力が得られないときは、難しい法律問題が生じますが・・・

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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