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行政 家屋に課される固定資産税のしくみ

2012年1月16日 公開 / 2016年3月15日更新

テーマ:民法と税法

コラムカテゴリ:法律関連

1 固定資産税は、固定資産に対し、その所有者に課する地方税(法342条、343条1項)。土地や建物や償却資産に課税される。
2 住家、店舗、工場、倉庫その他の建物(以下「家屋」という。)に対して課する基準年度の課税標準は、当該家屋の基準年度に係る賦課期日(毎年1月1日)における価格、すなわち「適正な時価」で家屋課税台帳等に登録されたもの(「登録価格」)である(法349条1項、341条3号、5号)。
3 登録価格の決定に際しての固定資産の評価については、総務大臣が、評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め告示しなければならないものとされている(法388条1項)、これを受けて、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)が告示されている。
4 市町村長は、評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならず(法403条1項)、これを決定したときは直ちに固定資産課税台帳に登録しなければならない(法411条1項)。
5 これにより、家屋の固定資産税が高いと思えるときは、家屋の評価が違法かどうかを見るべきことになる。
6 そこで、建物の評価基準はどうなっているかを見る。
ア 家屋の評価は、木造家屋及び非木造家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法による(評価基準第2章第1節一)。 
イ 評点数の算出方法
 非木造家屋の評点数は、当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎とし、これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設して、次の算式によって求めるものとし、当該非木造家屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは、当該非木造家屋の評点数は、次の算式によって求めた評点数に需給事情による減点補正率を乗じて求めるものとする(評価基準第2章第3節一1)。
〔算式〕評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率
要は、家屋の固定資産評価の方法は、評価の対象となった家屋と全く同一のものを、新たに建築しようとした場合において必要とされる建築費(再建築費)を求め、当該再建築費に当該家屋の経過年数に応ずる損耗の状況による減価等を考慮して、求めるものとされているのである
ウ 再建築費評点数の算出方法
 再建築費評点数の算出方法には、部分別による算出方法及び比準による算出方法がある(評価基準第2章第3節一2)。
このうち、部分別による算出方法によって再建築費評点数を求める場合は、当該非木造家屋の構造の区分に応じ、当該非木造家屋について適用すべき非木造家屋評点基準表によって求めるものとし、この場合においては、各個の非木造家屋の構造の区分に応じ、当該非木造家屋に適用すべき非木造家屋評点基準表によって当該非木造家屋の各部分別に標準評点数を求め、これに補正項目について定められている補正係数を乗じて得た数値に計算単位の数値を乗じて算出した部分別再建築費評点数を合計して求めるものとする(評価基準第2章第3節二)。
エ 損耗の状況による減点補正率の算出方法
 非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は、経過年数に応ずる減点補正率によるものとする。ただし、天災、火災その他の事由により当該非木造家屋の状況からみて経過年数に応ずる減点補正率によることが適当でないと認められる場合においては、損耗の程度に応ずる減点補正率によるものとする。(評価基準第2章第3節五)

オ なお、市町村長は、法第411条第2項の規定による公示の日以後において固定資産の価格等の登録がなされていないこと又は登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならず、この場合においては、市町村長は、遅滞なく、その旨を当該固定資産に対して課する固定資産税の納税義務者に通知しなければならない(法第417条1項)ことになっている。
から

カ 固定資産課税台帳の登録価格に不服がある場合には、市町村(東京都の場合は東京都)固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすることができる。
固定資産評価審査委員会(こていしさんひょうかしんさいいんかい)は、市町村に置かれる行政委員会である。その職務は、別に法律の定めるところにより、市町村長とは独立した中立的・専門的な立場から固定資産課税台帳に登録された事項に関する不服の審査及び決定その他の事務を行う(地方自治法第202条の2第5項)ことである。
審査の申出をすることができる者は、固定資産税の納税者に限られる。
審査の申出をすることができる事項は、固定資産課税台帳に登録された価格に限られる。ただし、据え置かれた価格に対する不服については、審査の申出の理由とすることはできない(地目の変換、家屋の改築又は損壊等の事情を申し立てる場合、土地の価格が地方税法附則第17条の2第1項の規定に基づき修正されるべきものであることを申し立てる場合を除く。)。
キ 固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、固定資産課税台帳に固定資産の価格等のすべてを登録した旨の公示をした日(平成24年度は4月1日)から納税通知書の交付を受けた日後60日以内(ただし、地方税法第417条第1項の通知を受けた場合は同通知を受けた日から60日以内)に、文書をもって審査の申出をすることができる。なお、縦覧に供した日以後に価格の決定又は修正があった場合は、その通知を受けた日から60日以内に審査の申出をすることができる。
審査の申出は、審査申出書(市町村固定資産評価審査委員会規程様式)を市町村固定資産評価審査委員会に提出(郵送可)して行う。なお、審査申出書の用紙は、市町村固定資産評価審査委員会及置いてある(地方税法432条、地方税法附則17条の2)。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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