遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
弁護士の大増員時代に入りました。
そのために、司法研修所を卒業しても、法律事務所に就職出来ない人たちが出てきました。
その結果、即独(そくどく)という言葉が生まれました。既存の法律事務所に就職できないために、卒業と同時に、即時独立して、弁護士の仕事を始めるという意味です。
軒弁(のきべん)という言葉も生まれました。既存の法律事務所で執務をするが、その事務所から給与は支給されず、その事務所から頼まれて仕事をしたときのみ報酬を得る弁護士のことですが、法律事務所の軒先を借りて仕事をするというイメージから軒弁という言葉になったものです。
このような弁護士の激増現象を捉えて、弁護士の危機だ、だから、司法試験の合格者数を減らすべし、との意見が、弁護士会内部からわき出てきました。
しかし、この現象は、はたして、弁護士の危機でしょうか?疑問です。
逆に、現在の弁護士の大幅増員は、弁護士にとっても、社会にとっても、たいへん有益な現象だと思います。法律文化が花開く時代の幕開け、というべきことではないかと思います。
すなわち、
弁護士の大増員は、会社や法人に弁護士有資格者を採用できるチャンスが生じたことであり、このことは会社や法人の法律文化を大いに高める結果になることだと思われます。
現在、当事務所の顧問会社・法人・自治体の中には、数億円、数十億円規模のプロジェクトや懸案を抱え、その相談のために、頻繁に当事務所に通われている会社等が複数あります。
そのようなとき、当事務所では、懸命にサポートをさせていただいていますが、当事務所が法的判断を下す際の、前提となる事実の把握は、顧問会社などから相談に来られた相談担当者の事実認識を前提にせざるを得ません。しかし、この場合、相談担当者の認識した事実が客観的な事実であるとは限りません。担当者の主観の入った事実であったり、深みのない事実である場合もあるのです。つまり、担当者の話や会社幹部の話の中味が、直接、なまの事実という訳にはいかないのです。
それは、当事務所の弁護士が、顧問会社等の内部に入って、プロジェクトや懸案の中味を学び、多数の従業員の現場の声を聴くことで、そのことがよく分かります。相談担当者の認識にはなかった重要事実が次々に発見できる場合があるのです。
これは、相談担当者に、無限かつ無数にある事実を法的に整理をした上で、法的に重要な事実をさらに深く調査をするという訓練がないことが原因です。
もし、会社や法人・自治体が、今後、弁護士有資格者を採用するようになると、このギャップは相当程度埋めることができるはずです。また、顧問弁護士の活用も、ずいぶん効率化するはずです。
そうすると、企業・法人・自治体の内部から、徐々に、法律知識と法的思考力をもった人が増え、これが社会的な広がりをもち、いわば法律文化が花開くのではないかと思うのです。