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継続的契約の一方的な解約は許されるか?

菊池捷男

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テーマ:民法雑学

メーカーから問屋へ。問屋から小売店へ。期間を定めないで、継続的に、商品を売買している関係や、期間を定めないで会社が業務の一部を外注に出している関係は、継続的売買契約、継続的役務提供契約、あるいは継続的契約と呼ばれますが、このような契約を、一方的に解約することができるかという問題があります。

1 裁判例の傾向
ほとんどの裁判例は、契約の解約はできる。しかし、解約するには、「やむを得ない事由」や「合理的な理由」が必要である。そうでない場合は、6ヶ月ないし1年の猶予期間を置かなければならない、としています。

東京地判昭和57年10月19日 判時1076-72
⑴ 事案の概要
Xは、印刷会社Yから、商品ラベルの一部を専属的に下請けしてきた会社である。
YがXへの発注を一方的に中止したことから、XはYに対し、損害賠償を請求した。
⑵ 結論
6か月分の逸失利益の賠償について、請求認容。その余は請求棄却。
⑶ 結論に至る理由
Xは、Yから継続的に毎月Xの売上の8割を占めるほぼ一定量の発注を受け、納品するという継続的な取引関係にあり、Yの発注に対応するために相当の投資をして機械設備、人員等の確保に努めてきた。このような継続的な取引関係に立つ当事者間においては、注文者はやむを得ない特段の事由がなければ、相当の予告期間を設けるか又は相当の損失補償をなさない限り、一方的に取引を中止することは許されないと解するのが、公平の原則ないし信義誠実の原則に照らして相当である。
YがXに対する発注を一方的に中止したのは、Yが訴外A会社からラベル印刷の発注を中止されたためであるが、Yは、A社から発注停止の予告を受けていたが、実行されることはないものと軽信し、まったくXに通告せず、また、A社に対して猶予期間等について交渉した形跡も見られない。したがって、Yについてやむを得ない特段の事由は認められない。
また、損害について、発注停止から7か月後にXの父が倒れ、受注をしうる状況にないこと、YがA社から発注停止の通告を受けたのが約6か月前であったこと等から、Xが得べかりし利益を喪失したと認められるのは6か月間とみるのを相当とする。

4 名古屋地判昭和46年11月11日 判タ274-280
⑴ 事案の概要
運送会社Xは、昭和39年3月ころから、乳製品の製造販売会社Yから、Y社の乳製品の配送を請け負っていた。しかし、Yは昭和41年3月ころから、Xに全く配送をさせなくなった。
Xは、Yのこのような措置は継続的請負契約の一方的な解約であると主張して、Yに対して損害賠償を請求した。
⑵ 結論
請求一部認容。一部棄却。
⑶ 結論に至る理由
Xが、Yの責任者の指示により、自己の負担で、乳製品の配送にしか使用できないトラックを購入したこと、Xが貨物自動車運送事業免許を取得するための証明書をYが交付したことなどの事情から、Yの措置は継続的請負契約の一方的な解約の趣旨と解するのが相当である。
製品の配送を請け負った者が相当の金銭的出捐等をしたときは、期間の定めのないときといえども、配送をさせる者において相当の予告期間を設けるとか、又は相当の損失を補償しない限り、配送業務を行う者に著しい不信行為又は右の契約関係を継続しがたい重大な事由のない限り、配送をさせる者は一方的に解約できないものと解すべきである。

5 仙台地決平成6年9月30日 判時1553-126
⑴ 事案の概要
運送会社Xは、昭和46年の設立以来、平成6年3月まで、冷菓等製造業者Yの委託に基づき、Yの製造する冷菓製品等をYの工場から各地の物流倉庫まで大型車により運送してきた。
昭和53年4月1日に交わされたXY間の運送委託契約書では、契約の有効期間は1年間とし、期間満了1か月前までに当事者のいずれからも別段の意思表示がない場合は更に1年間有効とする旨定められていた。
契約書の上記条項に基づき、Yは、Xに対し、平成5年12月20日、平成6年3月31日限りで本件契約を終了させる旨の通知をした。これに対し、Xは、本件契約の運送委託を受けるべき地位の保全を申し立てた。
⑵ 結論
解約のなされたときから相当期間の6か月が経過した平成6年6月に本件契約は終了したとして、申立却下。
⑶ 結論に至る理由
YがXに対し平成5年12月20日にした契約を終了させる意思表示は、その実質において解約の意思表示にあたり、その効力を判断するにあたっては、期間の定めのない継続的契約の解約の法理を類推するのが相当である。
そうすると、契約を解約するためには、Xに対し、相当の予告期間をおいて解約を告知することが必要であると解されるところ、本件契約に基づく運送業務がXの全業務中に占める割合を考慮すると、Xが新規に本件契約と同種・同規模の運送委託契約を締結することは事実上不可能であるから、Xは、広域運送に関する契約の終了によって、極めて大きな影響を受け、経営上深刻な事態を招きかねないものと認められ、その他諸事情を総合考察すると、右の予告期間は、これを6か月間とするのが相当である。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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