使用者のための労働問題 就業規則を変更したときの附則の書き方
1 労働時間とは?
労働基準法32条1項は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」と規定していますので、「休憩時間」が労働時間でないことは明らかですが、「労働時間」とはどんな時間?
また、24時間勤務の労働者の「仮眠時間」は、労働時間になるのでしょうか?
2 労働時間になるとの最高裁判決
最高裁14.2.28判決は、「仮眠時間中、警報が鳴り次第速やかに対応することが義務付けられている場合は労働時間となる」と判示しています。
理由は、この間であっても使用者の指揮監督権が及んでいることです。
3 では、この間、労働契約上の賃金を支払う義務があるのでしょうか?
同判決は、24時間勤務の労働者に対して「泊り手当」を支給している場合は、労働者には、仮眠時間中の不活動仮眠時間について、それを超える賃金の請求権はない。
しかし、仮眠時間が労働時間に含まれる以上は、労働契約上の賃金を元に計算される時間外労働手当と深夜労働手当は支払う義務がある、と判示しています。
判決文を引用しますと
「上記のとおり,上告人(注:労働者)らは,本件仮眠時間中の不活動仮眠時間について,労働契約の定めに基づいて既払の泊り勤務手当以上の賃金請求をすることはできない。しかし,労基法13条は,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分について無効とし,無効となった部分は労基法で定める基準によることとし,労基法37条は,法定時間外労働及び深夜労働に対して使用者は同条所定の割増賃金を支払うべきことを定めている。したがって,労働契約において本件仮眠時間中の不活動仮眠時間について時間外勤務手当,深夜就業手当を支払うことを定めていないとしても,本件仮眠時間が労基法上の労働時間と評価される以上,被上告人は本件仮眠時間について労基法13条,37条に基づいて時間外割増賃金,深夜割増賃金を支払うべき義務がある。」というものです。
4 その他労働時間ではないとされる時間
・出張中の列車乗車時間
・トラック運転手のフェリー乗船時間
・いわゆる呼出待機の場合の待機中の時間
これらは、時間内になすべき具体的労働のない限り労働時間ではないとされています。
使用者の始期監督権が及んでいないことが理由です。