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間違えやすい法令用語19 時・とき・場合

2011年6月19日 公開 / 2012年8月17日更新

テーマ:法令用語

コラムカテゴリ:法律関連

「時」と「とき」では意味が異なります。「とき」と「場合」は意味が同じです。

1「時」と「とき」の使い分け
「時」は、その「時点」、その「日時」、その「日」に意味があることを強調するときに使う言葉ですが、「とき」は一般的な仮定的条件を表す場合に使われる言葉です。

⑴ 時
憲法39条は「何人も、実行の時に適法であつた行為・・・については、刑事上の責任を問はれない。・・・」と規定しています。
この「時」は、「実行の日時」が重要な意味を持ちます。別の日ではない「その日時」が重要な意味を持つのです。
民法784条は「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と規定していますが、この「時」も「その日時」に意味のある規定です。「他の日時」では意味がないのです。

⑵ とき
憲法70条は「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」と規定していますが、この「とき」は、仮定的な条件をいう言葉です。「とき」を「場合」に置き換えることが可能です。

民法30条1項は「不在者の生死が七年間明らかでないときは、・・・失踪の宣告をすることができる。」と規定し、引き続いて民法31条は「・・・失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、・・・死亡したものとみなす。」と規定しています。
30条1項の「明らかでないとき」は仮定的条件を表していますので「明らかでない場合」と同じ意味になりますが、31条の「満了した時」は、満了した日」を意味しますので、「満了した場合」という言葉に置き換えることはできません。

2 「とき」と「場合」の使い分け
「とき」も「場合」も、同じ仮定的条件を意味しますが、仮定的条件が複数重なる場合があります。このような場合は、大きい条件には「場合」を、小さい条件には「とき」を使います。

民法26条は「不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、・・・」と規定していますが、

「不在者が管理人をおく」という仮定的条件を設定し、その仮定的な条件のもとで、さらに、「不在者の生死が明らかでない」という仮定的条件を設定する場合は、前者の方が大きい条件、後者の方が小さい条件になりますので、前者の仮定的条件を表す言葉は「場合」を、後者のそれは「とき」を使うのです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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