遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 家族名義の預金は誰のものか?
一家の主人が、妻や子名義で預金をすることがありますが、それが真実妻や子に贈与したものか、単に名義を借りている(あるいは名義を使っている)だけなのか、表面的には分かりがたいものがあります。
預金は、必ずしも名義人の財産とはみられません。
預金者はお金を出した者であるという「出捐者説」が判例だからです。
いざ、相続が開始して、相続税の申告の段階になって、家族名義の預金を、相続財産から除外すると、税務当局から更生・決定がなされることもあります。
これは税務当局が、家族名義の預金を家族のものとみないで、被相続人のものとみるからです。このように、家族名義の預金は争いになりやすいものなのです。
2 遺言で争いの根を断つ
家族名義の預金は、その名義人のものなのか?そうだとすると、それは持戻し対象にするのか、持戻し免除の対象にするのか?
このことを、遺言で明確にしないと、争いの元になります。
そこで、次のような遺言を書いておく必要があります。
【遺言文例】
妻の名義の下記預金は、私が妻に贈与しものである。そうでないとしても、この遺言で妻に与えるものである。また、この預金については、持戻しを免除する。妻は、この預金を取得した上で、残りの財産から法定相続分を相続できるものとする。