遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 「債務の全額」は遺留分算定の基礎財産から控除される
民法1029条1項は、「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」と規定していますので、被相続人の「債務の全額」のマイナス価額が遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。
2 債務の内容
⑴ 私法上、公法上の債務
債務には、被相続人の私法上の債務、公租公課、罰金等の公法上の債務があります。
⑵ 葬式費用は?
これは債務ではありません。葬式費用は、相続開始後、相続人あるいは喪主に発生する費用だからです。
⑶ 相続税は?
これも債務ではありません(東京高裁昭和60.9.26判決)。
⑷ 保証債務は?
判例は、「保証債務(連帯保証債務を含む)は、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、その履行による出捐を主たる債務者に求償しても返還を受ける見込みがないような特段の事情が存在する場合でない限り、民法1029条所定の「債務」に含まれないものと解するのが相当である」としています(東京高裁平成8.11.7判決)。