遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 寄与分の意味
これも、特別受益制度同様、公平の理念により、共同相続人間で、法定相続分又は指定相続分を修正するための制度です。
すなわち、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別に寄与した者がいる場合、その者に、相続財産の中から別枠で財産を与えようとする制度です。
2 寄与分の与え方
「寄与分」が認められる相続人は、相続開始時の相続財産の価額から、一定の割合(例えば2割あるいは3割)又は一定の金額(例えば500万円あるいは1000万円)を寄与分としてもらい、その上で、その金額を引いた残りの相続財産(みなし相続財産)に法定相続分又は指定相続分を乗したものを相続分(具体的相続分)として取得します。
例で示します。
ア 相続人・・・・・甲、乙、丙
イ 相続分・・・・・甲1/3、乙1/3、丙1/3・・この場合の相続分は法定相続分又は指定相続分(相続割合)です。
ウ 相続財産・・・・1億円
エ 寄与分・・・・・甲に1000万円
オ みなし相続財産・9000万円(相続財産1億円-寄与分1000万円)
カ 具体的相続分・・甲、乙、丙とも3000万円(みなし相続財産×相続分)・・具体的相続分は、金額で表示されます。
キ 最終の取得分は、
甲・・・3000万円の相続分(具体的相続分)+寄与分1000万円=4000万円。
乙・・・3000万円の相続分(具体的相続分)
丙・・・3000万円の相続分(具体的相続分)
3 寄与分の歴史
寄与分を定めた民法904条の2は、条文そのものが「の2」とある枝番つきの条文であることから分かるように、現行民法が公布・施行された当時にはなかったのですが、昭和55年の民法改正で創設されました。ただ、実務では昭和40年頃から、種々の理論構成によって、相続人の中の寄与ある者へ寄与分を取得させており、そのような背景があり、昭和55年の民法改正で創設されたものなのです。
ちなみに、この改正のときに、配偶者の法定相続分の引き上げなどもなされています。
参照
民法904条の2第1項
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条(筆者注:法定相続分と指定相続分に関する条文)までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。