遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
福岡高等裁判所平成22.2.17判決は、「預り金の返還請求権は金銭債権であり、可分債権であるから、相続人ら各人が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割単独債権として取得し、それぞれが相続分に応じた金員の支払を請求し得る」と判示しています。
ですから、被相続人が亡くなったとき、証券会社に預けたお金や銀行に預金がある場合、相続人は、他の共同相続人と遺産分割協議をしなくとも、自分の相続分について支払を請求できることになります。
例えば、父が亡くなった。証券会社や銀行に、100万円の預け金や預金がある。相続人は、母と本人と姉。遺言書はない。という場合、母は、法定相続分である1/2の権利がありますので、証券会社や銀行に50万円の支払を請求できるのです。証券会社や銀行は、子2人の同意書がない、全相続人による遺産分割協議が出来ていない、という理由で、その支払を拒むことはできないのです。
むろん、姉も25万円、本人も25万円、単独で、請求ができます。
以上の理は、昨日のコラムで紹介しました「預金」の外、貸金、賃料債権、その他金銭の支払を求める債権全般に及ぶものです。
ただ、投資信託については争いがあります。これは明日のコラムで解説します。