遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 遺言の効力が発生したとき、つまりは、遺言者が死亡したとき、受遺者がすでに死亡しておれば、遺贈の効力はどうなるか?
これは「相続33」で解説しましたが、遺贈の効力は生じません。
つまり、遺言者が死亡したときに、受遺者が生きていないと、遺贈の効力は生じないということなのです。これを「同時存在の原則」といいます。
民法994条の「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」と規定して、そのことを定めたものですが、この規定は、「遺贈は・・・効力を生じない」と定めていますので、同時に、代襲相続的な代襲遺贈を否定しているのです。
2 遺言の効力が生じないとどうなるか?
民法995条は、「遺贈が、その効力を生じないとき・・・は、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と規定していますので、遺言の効力が生じないと、原則として、財産は相続人に帰属することになります。
3 別段の意思
しかし、民法995条の但し書き、つまり、「ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」との規定によって、別段の意思を遺言に書いておけば、その効力が生じます。
例えば、
「私の財産はすべて、私の甥○山□夫に遺贈する。もし、私が死ぬ前に○山□夫が死亡しているときは、私の財産はすべて、○山□夫の妻である○山△子に遺贈する。」と書くのです。
そうすると、遺言者(私)が死亡したとき、甥の○山□夫が生きていれば、遺贈財産は○山□夫のものになり、遺言者(私)が死亡したとき、○山□夫が死亡しておれば、遺贈財産は、その妻である○山△子のものになるのです。