労働 減給処分における減給額の制限
就業規則は、労働契約に優先します(労働契約法12条)。
ですから、会社が社員との合意で、就業規則の内容よりも有利な労働条件を勝ち得たとしても、就業規則を変更しないままにしていたのでは、社員との合意は無効とされる危険があります。
給与・賞与の額や計算方法、退職金の計算基準の変更や制度の廃止、労働時間の変更、変形労働時間制の導入や変更、出向、配置転換基準の変更、賃金制度の年俸制への変更、降格、降給など明確化などについて、会社と社員との合意で会社の有利に変更できたものは、就業規則を変更して、その規定の中に入れておかねば、無効になってしまう危険があるのです。
もっとも、東京地裁平成9.3.25判決は、昭和36年の会社が盛況なときに制定された就業規則(の委任による給与及び退職金規定)に書かれた退職金や定期昇給、賞与に関する規定が、昭和56年の経営危機以後履行されていない事実と、そのことがあっても社員から苦情が出ていない事実から、従業員全員は、被告が右規定のとおりの昇給の実施をしないこと及び賞与の支給をしないことを暗黙のうちに承認していた、すなわち、黙示の承諾をしていたということができる、として、一部の社員が起こした、退職金、給与差額、賞与の請求を棄却しましたが、これなど、例外です。