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拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

パワハラ防止法に対応できていますか

2023年6月27日 公開 / 2023年6月30日更新

テーマ:中小企業の攻め方・守り方

コラムカテゴリ:法律関連


はじめに

2019年5月に労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が成立しています。
2020年6月に施行され、2022年4月からは中小企業も対象になりました。
これにより、各企業において同法に基づくパワハラ防止措置をとることが義務になりました。

パワハラとは

まず、どのような行為がパワハラとして対象になるのでしょうか。
同法では、
①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③その雇用する労働者の就業環境が害される
行為、と定めています。
したがって、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。
しかし、客観的に見てそうであると言える必要があり、「わが社ではこれくらいは普通」という言い分は通用しません。

厚生労働省のパンフレットには、具体的な類型として、次のような行為が例示されています。
1 身体的な攻撃(暴行、傷害)
例)殴打、足蹴り、物を投げつける。
2 精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
例)相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動など、人格を否定するような言動を行う。
例)業務の遂行に必要な以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。
3 人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)
例)1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。
4 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
例)新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する。
5 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
例)管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
例)気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
6 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
例)労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。

各企業が講じるべき措置は

このような行為を防止するために、各企業はどのような措置を講じなければならないのでしょうか。
同法では、
①労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
②事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
としています。

ここでの「雇用管理上必要な措置」とはどのようなものなのでしょうか。
同じく厚生労働省のパンフレットには、具体的な措置の内容として、次のような項目が挙げられています。
①事業主の方針等の明確化および周知・啓発
●職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
●行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
●相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
●相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
③職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
●事実関係を迅速かつ正確に確認すること
●速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
●事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
●再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)
④併せて講ずべき措置
●相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
●相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

まず、どのような行為が行ってはならないパワハラにあたるのかを明示して、就業規則に服務規律として規定し、そのような行為があった場合にどのような処分を受けることになるのかを就業規則の懲戒規定に明記することが考えられます。
そして、相談窓口を設置するとともに、配置転換などが可能なように、しかるべき部署と連携がとれるようにしておくことが望ましいでしょう。
また労働者が相談を躊躇することがないように、相談してもプライバシーは保護され、不利益も受けないことを、あらかじめ労働者に周知しておくべきです。

義務を怠ると

各企業が同法上の義務を履行しなかったとしても、罰則はありません。
もっとも、行政からの助言、指導、勧告の対象になり、勧告に従わなかった場合に公表がされることがあります。

ハラスメントを原因とする労働紛争は、増える一方です。
労働紛争の発生が企業に与えるマイナスは決して小さいものではありません。
この機会に、パワーハラスメントだけでなく、セクシャルハラスメントやカスタマーハラスメントなど、職場におけるあらゆるハラスメントをなくする取り組みをはじめてはいかがでしょうか。

この記事を書いたプロ

拾井央雄

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