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コラム

行動の裏にある「愛されたい」という情念

2023年6月11日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

目 次

1.「ママは悪くない。ボクが悪いんです」

2.愛されんがために自己を見失う

3.「振り向いて欲しい。ただそれだけです」

4.心にある光と影

5.わが子に映る幼子の自分

「ママは悪くない。ボクが悪いんです」

厚生労働省が公表した2021年度の虐待件数の総数は20万7659件と、31年連続で「過去最多」

を更新しています。 内容的には、心理的虐待が身体的虐待やネグレクトを上回り、2021年度

は初めて全体の6割を超えています。

「心理的虐待」は、「面前DV」がありますが、家族間の一方的な暴力行為だけでなく、両親

が激しく言い争う「夫婦げんか」も「面前DV」に当たるとされ、子どもに与える影響は、

決して小さくないのです。



虐待事例の中でよく耳にすることは、子どもは「自分が悪い子だから」と、親をかばうという

ことです。

なぜなのでしょう?

その心理が、ひきこもる行為の訳を知るヒントを教えてくれます。

愛されんがために自己を見失う

子どもにとって親の存在は、無条件で自分を受け入れ愛してもらえるはずの存在です。

だからこそ、子どもたちは、その愛が無条件ではないということに気がついた時、命をかけて

その条件にかなおうと必死になります。痛々しいほどです。

親からの承認を得られない自分は、無価値な存在となってしまいます。

子どもたちは、親の期待や欲求を読み取ることに懸命になり、いつの日か自分の欲求に気づけ

なくなってしまいます。

偽りの自分を作り上げ、それを真の自分と錯覚してしまうのです。

やがて偽りの自分だと気づいた時、もぬけの殻の自分に戦慄し、他者の視線に恐怖し、

ひきこもってしまいます。



自分の真の欲求を知りたくても、すり替えられた欲求を満たすことに奔走してきた子ども

たちは、発展的な行動を誘発するだけの欲求を感じる取ることができず、強迫的行為を繰り

返し、自己を破壊していきます。

「振り向いて欲しい。ただそれだけです」

これまで出逢った不登校、ひきこもりの青少年たちの多くが、低年齢期の親との関わりを

話して聞かせてくれました。

「ほめてもらったことがない」

「ありがとうって言ってもらえなかった」

「何をするにも否定された」

といったようなことばかりです。

「親にとっていい子の時とわがままを言った時の親の態度の落差が激しかった」

「この家で安全に暮らすためには、親の期待を読み取るしかなかった。でも他の兄弟とは

違い、僕にはそれに応えきれるだけの能力はなかった」



これらの状態の子どもたちが、存在証明をかけて、親にとって気づきやすいよう痛みを

与えるメッセージを送り始めます。

不登校、ひきこもり、家庭内暴力、非行行動、いずれもが自分の存在に気づいてもらうため

の精一杯の主張です。

それらは親を疲弊させ、今さらながら存在に気づいてもらえても、かえって存在を容認して

もらえる結果とはなりません。

しかし、気づいてもらえるだけでも命がつながる思いなのです。

ありのままを認めてもらえず、期待にそえなかった子どもたちは、親の不幸を自分のせい

だと思い込み、偽りの自己から脱却できぬまま人生が制御不能となってしまうのです。

心にある光と影

親にとってわが子は愛おしい存在です。

そうであればあるほど様々な期待が出てくるものです。

とは言っても、自身が期待することと、わが子の資質、個性が同じ方向性とは限りません。

と言うよりも、わが子の可能性を読み取ることは、決して簡単なことではありません。

ですから、ともすると勝手な自己都合で、自身の欲求を満たす目的でわが子を動かそうと

してしまいがちです。

そういった際に、問題が生じてくるのです。



親がわが子の行動の中で受け入れられないものがある場合、それは実は自分自身の中の受け

入れ難い側面であることがあります。

この自分の意識が受け入れられない自分の負(悪)の部分をユング心理学ではシャドーと

いいます。

自分のシャドーは、かねて表の生活では周囲には見せていない、人目をはばかる部分です。



人には、他者の幸福を願う心と、逆に幸福をねたむ心も存在します。

したがって、そういった部分があるということも自分でも認めたくありません。

その時、そういった受け入れがたい感情が、わが子の言動や態度に現れた時、わが子に

嫌悪感を感じてしまうのです。

自分ではなく他者の心から発せられたものとし、自己を守ろうとします。

これを投影といいます。

他者を否定することで、自身を否定することを避けようとするのです。

子どもを躾けているつもりが、実は自分を守るためのわが子イジメになってしまっています。

わが子に映る幼子の自分

また、わが子の姿に、自身の子ども時代を重ねて(投影)しまうケースがあります。

わが子が、いつのまにか幼いころの自分になってしまい、そのころ求めても満たされなかった

欲求をわが子が欲しているものと取り違え、過剰に満たそうと懸命になります。

そこにいるのはもう親ではなく、子ども自身です。

子どものころ甘えることを許されず、我慢してきた母親が、無邪気に自分に甘えてくる子ども

を許せず、突き放してしまっていた過去を悔いていた事例もありました。

そのことが子どもの心を歪め、自尊心を剥ぎ落とすこととなってしまったのです。



これらの危険をわが子に与えないためには、親自身が自分の心としっかり向き合うことが

必要です。

自分の中のシャドーを否定するのではなく、受容しコントロールしていく。そして、満たされ

ないままにごまかしてきた欲求を知ることが大切です。

親がわが子を欲求を満たす道具と化した時、子どもは無力となり、自分でいられるための

コントロールを完全に失ってしまうのです。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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