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コラム

秋葉原無差別殺傷事件から14年目の死刑執行

2022年12月14日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

目 次

1.狂気を招いた親の虚栄からの重圧

2.ありのままを許されず存在の意味を失う

3.孤独感の痛みを怒りにすり替え自己を守る

狂気を招いた親の虚栄からの重圧

今年を振り返ると、7月に14年前秋葉原で起こった無差別殺傷事件の加藤智死刑囚の刑が

執行されたことが思い出されました。

繁華街にトラックで突っ込み、通行人を次々とナイフで切りつけたおぞましい事件でした

ので、誰でもが記憶に残っている事件でしょう。



彼は、携帯電話の掲示板に、事件に至るまでの経緯を実況中継のように書き込みしていました

が、犯罪心理学などの識者が、「ゆがんだ自己顕示」と当時分析していました。

その書き込みの中で私の目に留まったのは、

「小さいころからいい子を演じさせられていたし、騙すのには慣れてる」

「いつも悪いのは全部俺」

「隣の椅子が開いている座らなかった女の人が、2つ隣が開いたら座った。

さすが、嫌われ者の俺だ」

という部分です。

これらの書き込みから、なぜこれほど歪んだ形でここまで自己顕示しなければならなかった

のかが、見えてくるような気がします。



彼の自身の生い立ちに関わる発言の中には、

「作文も絵も親がかいたもので賞をとりました」

「親の検閲が入っていました」

「実力がある弟の方が成績を取り出してからは、親の関心は弟に移りました」

と、ありました。

彼の母親は、非常に教育熱心で、子どものテストの点数を話題にするほどだった。

彼が短大に行ったことを近所には隠し、有名大学に進学したと嘘を言っていた。

これが真実だとするなら、先の書き込みの内容は、十分理解できます。



「小さいころからいい子を演じさせられていたし、騙すのには慣れてる」

きっと、成績もよく、聞き分けのいい子を親から要求、いや強制させられていたのでしょう。

その家で生き残っていくためには、それに従うしかなかったのでしょう。

いわゆる「教育虐待」ですね。

ありのままを許されず存在の意味を失う

「隣の椅子が開いている座らなかった女の人が、2つ隣が開いたら座った。

さすが、嫌われ者の俺だ」

こういった内容は、私は支援活動の中で出逢った青年たちから実はよく聞かされます。

ありのままを許されなかった子どもたちが、社会生活の中で周囲から批判されたり、否定

される機会に遭遇すると、すべてを自分に結びつける「関係妄想」や「被害妄想」が強く

なってしまう傾向があります。

もちろん、だからといって彼のおこなったことが赦されるわけではありません。

こういった犯罪に至ってしまう心を生み出す背景を考えなければならないと思うのです。

犯罪という形で、他者をも巻き込み自分に制裁をくわえたい若者たちが生まれてくる、

その背景を知るべきだと。

「犯罪者予備軍って、日本にはたくさん居る気がする」

加藤智死刑囚のこの言葉に、社会はただ個人を批判するだけでいられるのでしょうか?

奇しくも同じ7月の8日には、安倍元首相の銃撃事件も起こっています。

この事件の背景にも家庭の問題がありました。

孤独感の痛みを怒りにすり替え自己を守る

不登校やひきこもりという状態は、必要なあたりまえ(とうてい耐え難いといったものでは

ない)のことが、できなくなってしまっている状態と言えます。

当事者としての青少年たちの心の中にあるものは、恐れであり、怒り、憎しみです。

この恐れや怒り、憎しみが、必要なあたりまえのことすらできない状態にしてしまっています。

決して自分は周囲から必要とされないであろうという絶望的な恐れから、外界と関わること

を拒絶し、孤独感をさらに強め、ありのままの自分でいさせてもらえなかったことに対して、

激しい怒りをかかえているのです。



何ものかを求め、得られぬ時、人は怒りを覚えます。

それは、得られぬことでの傷みをまぎらわせるために、怒りのエネルギーにすり替えるの

でしょう。

その得たいものが、限定された相手からのものでなければならない場合、その相手が自分に

それを与えてくれなかったという、もうひとつの傷を受けてしまいます。

その得たいものが、自分を無条件に求めてくれる愛情であったとするならば、相手である

親に対し、怒りから憎しみへと変質します。

自分が自分のままで生きていくことを許されぬということは、自分ではない他の人間でない

と必要とされない、愛されないという絶望感と同時に、そのままの自分は無価値であると

いう強烈な自己否定感を心に刻みます。



そういった青少年たちは、自身のそれまでの生き方自体を呪っていることも少なくありません。

自分といったものを際立たせる外界(他者の存在)は、彼らにとって、恐怖以外の何ものでも

ありません。あたりまえの世界ですら、息をすることさえままならぬ空間となるのです。

「こんな私では、なおさら受け容れ難い子どもなのでしょうね」と自虐的に怒りを表現し、

閉じこもっていきます。と同時に、この子らは、「私はあなたから愛されることが必要なの

です。ありのままを認めてもらいたいのです。なぜなら私はあなたの子どもでありたいから」

と声無き声を発信しているのです。



さあ、親たちは何ができるでしょうか?

親だからこそしてあげられることは何でしょうか?

その子らしさといった輝き(可能性)をもった、かけがえのない存在であることを自覚させて

あげられるようなはたらきかけをすぐに始めてください。

子どもたちは待っています。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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