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「ひきこもる必要のない人々の社会」~生きる目的を自覚し自分らしさを取り戻すプロセスをサポート

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀

ひきこもりの人、その家族の支援活動を20年以上続けている中光雅紀理事長
ひきこもるのは当事者のみならず、家族にも原因があることを理解してもらうため、個別、複数様々なカウンセリングを実施

#chapter1

当事者だけではなく、家族にもある原因を見つけ出す

 近年、社会問題となっている「ひきこもり」。80代の親が、50代の子どもの面倒をみる「8050問題」が提起されるなど、ひきこもりの長期化、高齢化が、さらなる懸念要素として注目されています。

 「地球家族エコロジー協会」は福岡を拠点に、ひきこもりに苦しむ人やその家族の支援を活動の柱とするNPO法人です。主催者で理事長を務める中光雅紀さんは、2005年にこの協会を設立。その10年前の1995年から20余年にわたり、ひきこもる人と家族のサポートに取り組んできました。

 支援活動は「なぜ人がひきこもりという行動・状態に陥ってしまうのか」という根本的な原因を突き止め、改善に向けて働きかけていく点に特徴があります。「例えば、いじめや強い叱責を受けたことを『きっかけ』に不登校やひきこもりになるケースがありますが、それはあくまで『きっかけ』であり『原因』ではありません。ひきこもる本人の内側にある『原因』が、ひきこもりという行動に向かわせています。その『原因』は本人と家族の関係性のひずみから生じているケースがほとんどです」と中光さんは説明します。

 わが子がひきこもりになると、保護者は「この子はどうしてしまったのか?」と驚くでしょう。しかし自分たちの側に原因があることに、なかなか気づくことができません。同協会は家族と深く関わり、家族にも原因があることを理解してもらいながら、家族と一体となって、ひきこもりの当事者を問題解決へと導いていきます。

#chapter2

ひきこもりは、決して病気などではないことを伝えたい

 親の中にある問題を見いだして家族の絆を取り戻し、ひきこもる当事者が「ひきこもる必要のない」状態に導く。その解決へのアプローチは、中光さんがまったく異分野で積み重ねてきた経験からの視点や試行錯誤の結果からこその特異な方法です。

 「大学卒業後は会計事務所に就職したのですが、もともと心理学や人間探求が好きでした。その職場で、たまたま人材研修のコーチを任された経験が現在の活動の原点です」と中光さん。その経験とは、主催した研修の受講者から「自分が変われることを知りました」という言葉を受けたことでした。「自己の独自性に気づかせ、可能性に目覚めさせることが天職かもしれない」。そう信じた中光さんは会計事務所から独立し、教育研修の会社を立ち上げます。

 新たな会社は研修だけでは収益の見通しが厳しく、泣く泣く学習教材の販売にも着手したところ、ある販売先で不登校の女子児童との出会いがありました。
「当時は不登校イコール病人という捉え方が一般的でした。でもそのことに、とても違和感があったんです。そこで、その女子児童に研修事業で行っていた勇気づけプログラムで対応したところ、本来の自分を取り戻し元気に復学できたのです」。

 その経験から中光さんは、同じような問題を抱える子どもたちの助けになりたいと1995年、不登校児童専門の家庭教師「北辰学院」、心理教育カウンセリング・オフィス「ふぉーらむ北辰」を開設し、さらに2005年、NPO法人「地球家族エコロジー協会」を設立することで活動を拡大しました。

行政や社会福祉協議会が主催するセミナーなどでの講師・講演依頼も年々増加中

#chapter3

同じ課題を抱えた人たちが、支えあい、学びあい、乗り越えていける場所づくりを

 「地球家族エコロジー協会」が支援の対象としているのは、ひきこもりだけではありません。ネグレクト、アダルトチルドレン、虐待、依存症など、さまざまな問題を抱え悩む人やその家族の相談に乗り、問題解決への協力をしています。

 具体的な活動の一部を紹介すると、不登校・ひきこもり無料相談、ニートについての相談、ひきこもりの子どもを持つ親を対象にした定期フォーラム「たらちねの会」の開催、個別カウンセリングなど。中光さんへの講演やメディア取材の依頼も多く、積極的に対応しています。

 そして支援活動開始から25年を迎えた2020年より、新プロジェクトとして「OKAGESAMA fellowship」を構想し、クラウドファンディングでの資金調達を視野に入れながら準備を進めています。ひきこもりなどの当事者はもちろん、その家族、支援者など、ひきこもりに関わる人たちが、自由に集うことができる場所づくり。それが「OKAGESAMA fellowship」の構想です。

 「ひきこもりの問題は、本人や家族が周囲からの『孤立無援』状態で強化されてしまいます。よって、必要なことは『つながり』を構築していくことです。『つながり』を導くものが『縁』で、血縁や地縁ではなく、共通の問題を抱える人たちが、いわば『問題縁』というつながりを持って痛みや喜びを分かち合いながら、抱えている困難から気づき、学びを得て成長していける場作りを目指しています」と中光さん。ひきこもりという行動の根本になっている人や社会とのつながりの断絶、閉じこもってしまう生き方の改良・改善のため、「生きていく意味への援助」「より良く生きていくことの人生支援」を行う自助共同体の構築、それが「OKAGESAMA fellowship」の壮大な目標です。

(取材年月:2021年4月)

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専門家プロフィール

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀プロ

不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント)

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

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