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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(聞く)

2020年3月22日 公開 / 2021年8月30日更新

テーマ:ファシリテーション

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 業務効率化 手法生産性向上 取り組み働き方改革

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

私は、『会社の会議:不要な会議がもたらす悪影響を考える:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。
このコラムの中で、朝日新聞のアンケートの結果を紹介し、時間が長い、結論が出ない、物事が決まらない、等々の悩みや課題があるということを書きました。

今回は、共感マップというフレームワークを用いて、会社の会議に参加している方々の悩みや課題を見える化し、ファシリテーションを活用することで、どう変わるのか、ということを、下記の3つの章で説明します。5分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. 共感マップの紹介

共感マップというのは、XPLANE という会社が開発したフレームワークです。英語では Empathy Map と言います。ある1人の利害関係者、あるいは1つの利害関係グループについて考えるものです。ペルソナを見える化するフレームワークといえます。

ペルソナ(persona)とは、サービス・商品の典型的なお客様像のこと。サービス・商品を利用するお客様の中でも特に重要なお客様像をモデル化したものといえます。

共感マップは、①頭で何を考え・感じ、②目で何を見て、③耳で何を聞き、④口で何を言い何を行動するのか、を見える化するためのものです。さらに、⑤苦痛なこと、⑥獲得すること、を見える化します。

例えば、デザイン思考(Design Thinking)のワークショップでも共感マップは使われます。お客様志向でアプローチするときに、お客様を理解するために便利なフレームワークです。

  1. まず最初にやることは、「誰について書くのかを決める」ことです。ペルソナを決めるということです。
  2. 次にやることは、「その人の視点に立って想像する」ことです。
  3. その次にやることは、「実際に確かめる(精度を上げる)」ことです。インタビューして聴いたり観察したりしながら確かめていきます。想像した事(仮説)が正しいか否か、漏らしていることはないのか、実際に検証します。


お客様について共感マップを作るときのキーポイントは下記a〜cの3点です。
a. どのくらい先のお客様まで考えられるか?
お客様は、彼ら彼女らのお客様(あなたから見るとお客様のお客様)のことを見て、ビジネスをしています。お客様の共感マップを作っているのですから、この視点はとても大切です。言われると当たり前に思えるでしょうが、実はこれはそんなに簡単なことではないのです。

b. 実際のインタビューで聴くときの注意点
注意点を3つあげるとしたら、「想定外を楽しむこと」、「先入観を捨てること」、「誘導しないこと」でしょう。
ペルソナの視点に立って想像した事をインタビューなどで検証するとき、想定外のことが起こり得ます。想定していなかったことが起こると慌ててしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。インタビューの場で、誰に何をどのように訊くのか、事前に戦略を立てるべきです。想定外のことが起きたとしても、いくつかの戦略を事前に準備していれば、対応できる可能性が高くなります。先入観を持たずにインタビューに望むこと、決して相手を誘導しないこと、これらも事前に質問を準備することで対応できます。オープン・クエスチョン(Open Question)とクローズド・クエスチョン(Closed Question)をうまく使うことが大切です。仮説検証技法を活用すると良いでしょう。

c. お客様の共感マップがあなたの会社の施策・方針と違う場合もある
これは悩ましい点です。あなたの会社の施策・方針にそぐわないと判断される場合もあるでしょうね。
もし、インタビューの場でこのようになった場合はどう対応するのか、事前に戦略を準備しておかないと、慌ててしまうでしょう。


2. ファシリテーション活用前(現状)の「聞く」

この章では、現状「参加者は会議中に何を聞いているのか」を書いてみたいと思います。

下図は現状の会議について、共感マップで見える化したものです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ現状

ペルソナは、会社の会議に参加している方(あなた)です。
私はあなたに実際に確かめていないので、私が想像して書いたレベルのものです。とはいうものの、全くの想像ではなく、例えば朝日新聞の特集や、私が会社の会議について話を聴くことができた方々の意見を総合したものになっています。


会議に対して悩み・課題をお持ちの方について、下記 1〜6 の観点から共感マップを作成しました。

  1. 考える・感じる:会議について何を考えているのか?どう感じているのか?
  2. 見る:会議中に何を見ているのか?
  3. 聞く:会議中に何を聞いているのか?
  4. 言う・行動する:会議中に何を発言するのか?何をするのか?
  5. 苦痛:会議に参加することについてどんな苦痛があるのか?
  6. 獲得:会議に参加すると何が獲得できるのか?


積極的に参加していないし、内職しながら聞いている / そもそも議論が見えないので聞き流してしまうことが多い

そもそも内職しながら聞いているという時点で積極的な参加ではないですね。人間という生物は、同時に複数のことを同程度に集中することが不得意にできているようです。(コンピュータとは違いますね)

会議中に、会議とは関係のない内容の急ぎのメールを打つ、これ「あるある」でしょうか。
内職している最中でも議論は進んでいるので、内職が一区切りした段階、つまり内職から会議へ集中対象を切り替えた段階で、議論は進んでしまっているので、議論について行けずに、迷子状態になってしまう可能性大です。

迷子状態になってしまうと、面白くありません。面白くないから、ついつい聞き流してしまう。こんなご経験ありますか?

議論が見えていたら、迷子状態から自力で脱出できるかもしれません。周回遅れの状態から追いつくことができるかもしれません。しかし、議論が見えない場合は、迷子状態から脱出するのはかなり大変です。

「議論が見える」とは、どういうことか?以前私が書いたコラム『会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(見る)』で説明しています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みください。(https://mbp-japan.com/chiba/btfcons/column/5049308/)

ところで、内職って...
小学校の時にドッジボールをやったことのある方は多いのではないかと思います。外野にいるAちゃんは、今イラスト書きにハマっていて、ドッジボール中にノートにイラストを書いていたら...これ、あり得ないですよね。
でも私たちは?
小学生に説明できないことをやっているのです。
実は、こんなことを書いた私も、会議中に内職したことがあります。


人を攻撃するような発言やディベート的な発言を聞くことがある

聞き流しながら議論を聞いていても、攻撃するような発言やディベート的な発言で、場が一気に緊張したりすると、集中して聞き入ってしまったりしたことってありますか?

その議論の目的がディベートして勝ち負けを決めることであるならば、人を攻撃するような発言やディベート的な発言はOKかもしれません。
でも、会社の会議の目的は、違う目的・目標だと思います。



3. ファシリテーション活用後の「聞く」

この章では、ファシリテーションを活用した会議では、「参加者は会議中に何を聞いているのか」を書いてみたいと思います。

下図は、ファシリテーション活用後、言い換えると私が伴走型で支援させていただいた後の共感マップです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ協働後

当事者意識を持った積極的かつ闊達な議論

ファシリテーターは、参加者の方々と協働して、否定されない安心安全な場を作り出し、前向きな話し合いを促し、意見・アイデアを紡ぎ合わせていきます。

初回からいきなり変化することは無理かもしれませんが、何回かそのような場・雰囲気での話し合いを体験していただくことによって、当事者意識を持った積極的かつ闊達な議論をするように変わっていきます。

以前私は『会社の会議:会社の会議における「安心安全な場」とは?:今理解したい3つの視点』というコラムを書きました。(https://mbp-japan.com/chiba/btfcons/column/5042219/)
話し合う時に大切な下記の3つのポイントとして、具体例をあげて説明しています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

  • 否定されない安心安全で信頼できる場
  • 前向きな話し合い
  • アイデアを紡ぎ合わせようとしている



人を攻撃するような発言やディベート的な発言は聞かない

ファシリテーターが入ることによって、こういった発言はなくなっていきます。ディベート大会ではないので。

人を攻撃するような発言。犬猿の仲というか、言い掛かり的な発言をする人がいる場合があります。ファシリテーターは、その真意を確認させていただき、場合によっては発言をやめていただく場合もあります。予めグラウンド・ルールで決めておくと良いですね。

ただし、意見の対立は歓迎です。対立した意見が化学反応を起こし、新しいアイデアを創造する可能性があります。意見の対立が合っても、否定されない安心安全な場で、前向きな話し合いを促し、意見・アイデアを紡ぎ合わせていきます。

会社の会議において、真剣な議論の場での意見対立は、実は対立では無い、ということがあります。

1つのメタファーとして、姉と妹のオレンジの取り合いの話をしましょう。
学校から帰ってきた姉と妹が1つのオレンジを巡って喧嘩をしています。取り合いをしています。そこへ買い物からお母さんが帰ってきました。お母さんはオレンジを2つに切って、仲良く二人で食べなさい、と言いました。
妹はオレンジの皮を三角コーナーに捨てて中身を食べました。姉は捨てられたオレンジの皮をじっと眺めてからオレンジマーマレードを作り始めました。
お母さんが少し丁寧に、「対立しているように見えているもの」を解き解していたら、姉はオレンジ1個ぶんのマーマレードを作れたのです。妹もオレンジ1個分の中身を食べられたのです。そもそも喧嘩する(対立する)必要はなかったのです。

そもそも会社の会議においては、意見対立といってもベクトルが180度違うなんてことは滅多になく、多くは合意可能なベクトルの違いです。さらに、この合意を形成しようとする中で、新たなインサイトに出会うこともあります。みんな真剣に議論しているからです。

ところで、人を攻撃するような発言ではなくても、会議を独演会にしてしまう人に遭遇してしまったご経験をお持ちの方、いらっしゃると思います。私は『会議を独演会にする上司 - どうする?』というブログを書いています。
ご興味をお持ちの方は、是非お読みください。

言い掛かり的な発言をする人や、会議を独演会にしてしまう人が上司だったりすると、しかもその人が人事上の評価者だったりすると、グラウンド・ルールで予め決めてあったとしても、ファシリテーターとして介入するのを躊躇してしまうことがあるかもしれません。
職場の空気というか雰囲気によるのかもしれませんが、「そんなリスクを取りたくない」とか「自分がババを引くのは嫌だ」と思う人はいるでしょうね。日本にファシリテーションが浸透しない理由の1つがここにあるかもしれない、と私は思っています。

解決方法の1つは、私のような外部のファシリテーターを使うことです。ファシリテーションがある程度浸透するまでは、外部のファシリテーターを入れることで、あなたの会社の会議が変わることが期待できます。


本当に変わるのか信じ難い、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
本を読んだり話を聴いたりするのも良いでしょう。

百聞は一見に如かず。百見は一体験に如かずです。体験するのが一番早い、と私は思います。例えば「いつもの会議にファシリテーターが入った場合どうなるか」をリアルに体験できたら、分かっていただけるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたプロ

小川芳夫

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小川芳夫(BTFコンサルティング)

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