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清流のほとりのトイレで僕が失血したことについて【夏のアウトドアで注意したい事】山梨 漢方 さわたや

早川弘太

早川弘太

テーマ:漢方的ご自愛短編小説

これは初夏の爽やかな朝にある男に起こった悲劇のお話。

〜その日僕はいつものように駅に向かった。

僕が住む街は駅の近くに清流が流れているような自然豊かな場所だ。

今年も猛暑が予想されているが

ぼくの住む街はまだまだ朝は爽やかで、その日もそんな初夏の爽やかな朝だった。

僕はいつものようにコーヒーとトースト、それにちょっとした卵料理の朝食を取ると駅に向かって家を出た。

いつものように今日という一日が過ぎていくはずだったがその日はちょっと様子が違った。

「あれ・・・」

下腹部のあたりが何だが落ち着かない。

急に僕はトイレに行きたくなった。

僕にしてはいささか早いタイミングだった。

多くの人は朝起きて朝食前後にお通じが来ると思うのだが、僕は普段からちょっとゆっくり目に朝のお通じが来る方で

普段は会社についてからゆっくりトイレに行くのが日課なのだが今日は様子が違うらしい。

そんな呑気な事を考えていたのだが、物事は僕は思っているよりも深刻らしい。

急激に便意が僕に襲いかかってきた。

僕はできるだけそれを周りの人に悟られないように平静を装い駅まで向かった。

「やれやれ」と僕は声に出して言ってみた。

そうすれば少しはこの切迫した便意を押さえられると思ったのだが、僕の淡い期待は藻屑と消えてしまった。

そんな言葉ぐらいで押さえられるような便意ではなかったのだ。

僕は便意を我慢できる最速の速さで駅に向かって歩を進めた。

これ以上早く歩くと漏れてしまう。

かと言ってこれ以上遅いと間に合わないかもしれない。

この年になって粗相をするということはかなりの屈辱だ。

僕にだって人並みのプライドというものがある。

こんなところで漏らすわけには行かない。

そんな必死な思いが通じたのか、僕はなんとか駅に備え付けの

直ぐ側に清流が流れ、自然と調和したトイレに駆け込むことができた。

幸いなことに都心と異なりトイレの個室は空いており

(都会の朝のトイレの混雑は僕にディズニーランドを思い出させた)

僕は個室に駆け込むと素早くズボンを下ろし

(このタイミングも実は気をつけなければいけないタイミングで、ホッとした瞬間に粗相をしてしまう方も多いそうだ)

便座に座り込んだ。

「やれやれ」

今度も声に出して僕は言ってみた。

極限まで我慢したからであろう。なんとも言えない幸福感と快感が僕を襲う。

「排泄欲」

というものがあると以前聞いたことがある。

人間にはカラダの中から外にスッキリ物を出したい、という性欲と少しにて欲求があるそうだ。

僕はまさにその「排泄欲」が満たされたからであろう

恍惚な表情(きっとそんな顔をしていただろう)を浮かべながら電車までの時間も余裕があったのでしばらく便器座り余韻を楽しんでいた。

その時である

「イタッ!」

と僕は思わず声を上げた。

激痛ではないがちょっとした痛みを僕は股間に感じたがそのときは

「まぁ気のせいだろう」

と思い、スボンをあげて僕は通勤電車に乗るために自動改札を通ってホームへと向かった。

その後、まさか僕にあんな悲劇が起こるとは思ってもみなかった・・・

その日の悲劇は、まだこの時点では幕を開けたばかりだった。

電車に揺られている間、僕は先ほどの小さな痛みのことなど、すっかり忘れていた。

むしろ「やれやれ、朝から一仕事終えた」というくらいの、妙な達成感すら覚えていたくらいだ。

先程まで激しい便意と格闘していた人間とは思えない。人間とは本当に現金なものである。

ネコだったらきっとこうは行かないだろう。

安堵感ともにそんなどうでもいいことを考えているうちに無事に会社についた。

僕はいつも通り、何事もなかったようにいつものように席についてパソコンを立ち上げる。

メールを一通り確認し、コーヒーを一杯淹れ、女性社員から荷物の移動を頼まれていたことを思い出し僕にしては珍しく力仕事を朝から行った以外は本当にいつも通りの朝だった。

さあ仕事を始めようというところで、僕は妙な違和感に気づいた。

「……あれ?」

下着の中が、なんだか湿った感じがする。

荷物運びで多少汗をかいたにしても、汗にしては、様子がおかしい。

ズボンまで何か湿っているような感じがする。

朝の便意を思い出し、僕は周りのスタッフに悟られない程度の早足でトイレにむかった。

個室に入り恐る恐るズボンを下ろす。

そして僕はそこで絶句することになる。

真っ赤だった。

股間から下着にかけて、よく見るとスーツのズボンまで

まるでホラー映画のワンシートのように血まみれなのだ。

「う、うわあああ!」

思わず個室の中で血まみれの股間を見ながら声を上げてしまった。

頭の中を「大量の血尿?大量出血?」

という言葉がぐるぐると駆け巡ると同時に生まれて初めて僕は

「死」

というものを意識した。

そのとき頭に浮かんだのが駅の個室で股間に感じた

あの小さな「イタッ」だった。

まさか、あれが原因なのか。

震える手で僕は自分の性器を確認してみた。

そんな風に自分の性器を見るのは久しぶりというか初めてのことだった。

そしてそこには見慣れない小さな塊が張り付いてた。

そこにいたのは

・・・ヒル

だった。

それほど知識がない僕でも独特の黒とも茶色とも言えないフォルムが「ヒル」だとわかるまでにそれほど時間はかからなかった。

僕は恐怖心で自分の股間からヒルをむしり取るとトイレに流してしまった。

その後も出血は止まらず流れ続けている。

少し冷静さを取り戻した僕は血まみれの下着とズボンを履くと、オフィスの入口まで移動してちょうどそばに居た後輩を手招きして呼び込んで事情を説明した。

「えっ!?マジですが!?そんな事あるんですか・・・」と驚きながらも顔は笑っている。

確かに笑われても仕方ない、ヒルに股間を噛まれるなんてあまり聞いたことがない。血まみれの股間というのもある意味滑稽だ。

僕もこれだけの出血をしている割には痛みも、体調変化もなく、その後輩の様子を見ていると僕も徐々に冷静さを取り戻した。

幸い、同僚の一人がジムに行くためのズボンなどを持っていたのでそれを借りて、場所が場所だけにとりあえずは泌尿器科を受診することにした。

泌尿器科までは後輩が営業車で連れて行ってくれることになった。

20年落ちの古いカローラワゴンの車内で後輩は

「なんでまたそんなところをヒルに噛まれたんっすかね?林の中とか、渓流で怪しいことでもしてたんじゃないんすっか?」

っと元々下ネタが好きなこの後輩はからかってきたが、ショックで落ち込んでいる僕にはちょうどいいぐらいの明るさだった。

「なぜこんなことに・・・」っと言って僕が思い当たるのは

「あの場所」だ・・・

「ああ、それはヤマビルだね。慌てて引っ張っちゃダメなのに。」っと30代後半から40代ぐらいの、織田裕二をちょっと若返らせて毒気を抜いて、石黒賢を足して3で割ったようなマイルドな風貌の男性医師は笑顔で言った。

僕はとりあえずこの医者のことを心のなかで「織田裕二」と呼ぶことにした。(僕は勝手にあだ名を付けて心のなかで呼ぶクセがあった)

ヤマビルに噛まれたことは何かしらの僕にとってのメタファーなのかもしれない。

その織田裕二が言うにはヒルが皮膚についたままの場合、無理に引き剥がしてはいけないのだという。

口の一部が皮膚に残ってしまうことがあるからだ。

アルコールや塩を使えば、ヒルは自然と離れてくれる。

そして織田裕二は、少し真面目な顔になってこう続けた。

「赤く腫れたり、痛みが強くなったり、膿が出たり、熱が出たりしたら、特に早めに受診をするようにしてくださいね。」

「ところでどこで噛まれたか?心当たりはありますか?渓流に入って泳いだり、山なのかを歩いたり地べたに座ったりしましたか?」

心当たりも何も、あの場所しかない。

慌てて駆け込んだ駅のトイレだ。

あの駅のトイレは、すぐそばに清流が流れる、自然豊かな造りだった。

あの心地よい環境が、まさか僕自身にとっての落とし穴になっていたとは。

僕は事情を織田裕二に話すとさすがにちょっと驚いた顔をして

「いや、非常にレアなケースですが、山小屋のトイレやキャンプ場のトイレなんかではたまにある事例なんですよね。いや、本当に大変でしたね。出血が止まりにくいのでしばらくは大人しくされてくださいね。」

と織田裕二的なニヒルな笑顔を浮かべながら織田裕二の診察は終わった。

大人しくしろと言われても僕だって人間だ。

ホモ・サピエンスのオスととしての生理的反応だってある。

それをどうコントロールしていいのか?できるだけスパイシーなものは見たり、聴いたりしないように完治するまでは避けることにした。

幸い僕は独り身で、今は特定のパートナーもいない。誰かに迷惑をかけることはないだろう。

そんな馬鹿な事を考えながら待合室にいた後輩に礼を言って帰ろうと伝えると

「部長から連絡があって、今日は大変だったからそのまま上がっていいそうですよ。僕は会社に戻りますけどね・・・」

ということだった。

あまり気が利くタイプの上司ではないがさすがに今回の一件は驚いたのだろう。

僕自身もそのまま仕事に戻る気力もなく、僕はその日早退することにした。

病院から駅は割と近かったので僕は歩いて駅まで向かうことにした。

病院まで付き添ってくれた後輩にはこんどランチでも奢るよ、と礼を伝えて病院で別れた。

股間に絶妙な違和感を感じながら僕は駅に向かって歩を進め始めた・・・

(次回につづく)

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早川弘太
専門家

早川弘太(販売職)

株式会社 沢田屋薬局

医療機関などでは、忙しくてなかなか話を聞いてもらえなかったご経験ありませんか?まずお客様のお話をゆっくりとお聞きさせていただき、一緒に不調の原因を考えていきます。漢方相談と健康相談を行っています。

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