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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

気になる50代以下の孤独死

2022年6月17日

テーマ:50歳からの人生

コラムカテゴリ:くらし


【今日のポイント】

 孤独死、そして発見までの長期間の放置問題といえば、
「おひとり様の高齢者」が直面する問題というのが従来の捉え方でした。

 ですが、最近のより深刻な問題は、
50代前後の、まだまだ現役世代の50代以下の孤独死の動向なのです。

 今回はこの話題を紹介したいと思います。

【意外な実態】

 そもそもの始まりは
50代のおひとり様の相談者とのやりとりから、
参考資料として偶然手に入れたある資料からでした。

「孤独死現状レポート」という資料で、
少額短期保険会社の家財保険(孤独死特約付き)に加入している被保険者で、
この数年の間に発生した孤独死に関するデータでした。

 ただ、
これは賃貸住宅に住んでいるケースだけのデータであり、
持ち家での孤独死は含まれていません。

 この資料によりますと、
死亡から発見までの日数は、平均で17日、2週間以上経過している訳です。
また、3日以内に発見されるケースは女性が男性を大きく上回っていました。

 そして、私が気になった特徴として、
50代以下の「現役世代」が占める割合が、約40%という実態でした。

【現役世代の孤独死】

 社会との接点がある現役世代が長期にわたって死後放置されるということは、
同居する家族や知人がいない、いわゆるおひとり様が該当すると思われます。
 
 特に(私も該当しますが)、
士業等で、一人事務所を運営していた場合、
毎日顔を合わせる同僚がいない、
毎日事務所に出勤するような勤務形態ではない。
といったケースは少なくありません。

 同様にフリーランスで請負業務を生業としている、
個人事務所でWeb上でビジネスを行っている場合も該当します。

 それで、私生活でもおひとり様となれば、
孤独死のリスクは一気に跳ね上がるというものでしょう。

 特に「持ち家でひとり暮らし」となれば、
賃貸物件に暮らす場合よりも、より他人との接点は限られます。

 職場も一人、住まいも一人。
この様な暮らしをする場合は、年齢や性別に関係なく孤独死=長期放置、
といった状況に陥りやすいことは言うまでもありません。

 また賃貸暮らしと言っても
特に若い世代では、入居以来両隣と一度も挨拶していない、
挨拶しないまま転居したといった事例を耳にすることが多いようです。

 同様に家庭がある場合でも、
会社勤めで単身赴任している場合は、ほぼ周囲との接点は無きに等しいといった
事例を聞くことがありました。

【社会・周囲との接点を持つことの意味】

 ここでは紙一重で孤独死を免れた事例を紹介します。

 直接遭遇したわけではありませんが、
私の知り合いで、以前独身で賃貸暮らしの時に、脳溢血を発症したのです。
ですが、たまたま久しぶりに趣味のサークル活動に参加していたことで
すぐに救命措置が取られ、重篤な後遺症もなく完治しました。

 もうひとつの事例は、
単身赴任中のある時に、久々に洗濯や掃除の為にたまたま奥様が出向いたそうです。
そして、その日の夜に旦那が心臓疾患を発症したそうです。

 この時も、たまたま「同居人」となった奥様の存在が
緊急搬送を可能にし、無事に快癒したそうです。

 どちらも1日でもタイミングがずれていれば、
ほぼ確実に、孤独死となったでしょう。下手をすれば長期の死後放置にも…
 
 特に前者の場合は、
おひとり様ながら、趣味で社会との繋がりを持っていたことで命拾いをしてます。

 それも、人と接するといった趣味だったからです。
これが、チャットやゲーム繋がりの知人だけだったとしたら?
結果は全く異なるものとなったでしょう。

【孤独死=放置死を避けるには】

 あくまでも個人的な推測ですが、
若い世代での孤独死の原因のひとつは、他人との直接的な接触の少なさ、
これがあると考えています。

 避けようと思えば、避けられた孤独死ではないかと感じました。

 コロナの影響も多々あるとは思いますが、
直接会って会話する、多人数で会食することが制限されたこともあって、
「わざわざ外に出て行って人と会う」ことをせずに、
「SNS繋がりに偏向、lineやTwitterでのやりとり」で済ませるケースが目立ちます。

「毎晩定期的に連絡を取り合っているからお互いの生存確認になります。」
という方がいましたが、確かに「生存確認」にはなるでしょう。

 ですが、事故や急病で肝心の連絡が取れなくなった時はどうでしょうか?
いつもの連絡が来ないからと言って、すぐに安否確認の行動に移るでしょうか?

「たまたま不在なのかな?」
「まだ寝てる? もう寝たかな?」
など等、都合のいい解釈でその場をやり過ごすのではないでしょうか?

 近隣に住む友人であれば、足を運ぶかもしれません。
ですが、1回の音信不通ではまず行動に移すことはないでしょう。

 もっとシビアに言えば、
先に書いたようにネット上だけの繋がりの「友人」であれば、
そもそも相手の住所を知らない、聞いたことが無いことが普通です。

 心配は出来ても、行動に移すことは出来ません。

 FacebookやInstagramで千人単位の友人を誇っても、
顔の見えない友人の人脈だけでは、何の助けにもならないのです。

【問題は死後放置】

 孤独死はある意味仕方ない、避けられない最後ではあります。

 前述したように
単身赴任している妻帯者や、下宿や社員寮で個室暮らしする独身者の場合、
自室内で急な病や事故に遭遇した場合、たいていは孤独死になってしまいます。

 家族親族に看取られながら、最後の時を迎える。
少子化や親子の別居が当たり前となった現在では、残念ながらレアケースです。

 特に既往症もなく、入院や通院もしていないような
心身共に健康そのものといったひとり暮らし、おひとり様が問題なのです。

 唐突に自分の家で、部屋の中で死を迎えてしまった。
より深刻な問題は、その後です。

 如何に早く、親族や他人に自分の最期に気付いてもらえるか?
死後放置の期間を極力短縮する為にどういう手立てがあるのかを考える。

 この一点に絞られるのではないでしょうか?

 前述したように、
電話連絡やネット上での繋がりは、生存確認には役立ちます。

 ですが、
それだけでは途切れた場合に、即安否確認の行動には繋がりません。
それは、迅速な救命措置の機会が喪われたこととなるのです。

 特におひとり様の場合、家族との定期連絡自体前提として成り立ちません。
換言すれば誰にも看取られることなく、そして発見されることのない最期となるのです。
 

【40代からの終活で】

 実はこの4月以降、コロナの鎮静化を狙ったように、
4,50代からの起業・独立の相談の再開と共に、終活に関する問い合わせが
ジリジリと増加を続けています。

 その中でも多くの方が、
ここで採り上げた「孤独死のリスク」を気にし始めているのです。

 特に、フリーランスの職に就いているおひとり様や
私のようなひとり事務所を経営しているような方に多く見受けられます。

 なかには、仕事の都合上どうしても家族と別居しての起業を目指すような
家庭を持つ40代の相談者もいらっしゃいました。

 ここまで若手が孤独死を意識した理由は、
言うまでもなくコロナの存在です。

 コロナ感染が急拡大する中、急速な症状の悪化によって、
連絡をする間もなく孤独な死を迎えた著名人が続いたこと。

 もっと身近に、
昨日まで動き回ってた友人が、今朝は物言わぬ姿に変わり果てた…

 却って今まで健康だけが自慢というような元気印の方に、
「明日は我が身」という恐怖心を植え付けたのではないでしょうか?

 ですが急死というのは、何もコロナの専売特許ではなく、
いつどこで、どういう原因で遭遇するかは誰にも予測出来ません。

 どういう手立てが今の自分にとって即効性があるのか?
ここに書いてきたような直接的な人的つながりの確保以外にもあるかもしれません。

 状況によっては有料での民間の緊急通報の契約や見回り契約も選択肢の一つでしょう。
馴染みの食堂やコンビニを獲得しておくことも、間接的な安否確認に繋がる場合があります。

 各自が受け入れやすい方法でいいので、
少なくとも死後の長期放置だけは避けたいものです。



 最後に、当該のサイトにリンクを貼っておきましたので
興味のある方は参考にして下さい。

孤独死現状レポート

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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