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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

「すべてお任せします」は、安易に口にしてはいけません

2022年6月27日

テーマ:起業・独立

コラムカテゴリ:ビジネス


【今日のポイント】

 前回は、最近増えてきた相談初心者について紹介しました。
これに続きまして、今回も相談業務に絡む注意事項について紹介したいと思います。

 特に最近復活し始めてきた「起業・独立」に関しての注意事項です。

【全面的な信用は諸刃の剣】

 当人からすれば初めての「事業」となる起業・開業です。
いろいろな不明点や疑問点、不安要素などが入り乱れて当然です。

 そのような時に、とある第三者から実に的確に、ピンポイントのアドバイスを受けたとしたら?
多くの場合、(味を占めて?)続けていろいろなその他の悩み相談やアドバイスを求めがちです。
もっと極端な例では、「師匠」扱いにまでとなり、その言動に縋ってしまう事例も見受けられます。

 ですが、全面的に信用というか、依存してしまうのは要注意です。


 たまたまその問題に対してその人は過去によく似た経験があった、
非常にその筋の知識を持っていた等の背景があったから的確な対処法をアドバイス出来たのであって、それ以外の専門外や未経験の相談案件に同じだけの対応が出来る保証はどこにもないのです。

 相談を受けた際に、自らその任にあらずと正直に話してくれれば、この話はここで終了します。

 ですが、人間厄介なもので、相手から頼られている、期待されていると感じた場合、
何とか応えてあげようという感情が優先してしまうケースが非常に多いのです。

 その結果、単なる個人の主観からのアドアイスや意見を口にすることで、
却って事態を複雑化させてしまったケースも少なくはないのです。 

【適切な距離感を保つこと】

 「あれだけ水際立った対応をしてくれたのだから、この問題も正しい答えに導いてくれる。」

 この思い込みの具体例として、
今回の会社設立の手続きについて、迅速かつ正確に業務を遂行してくれた。
次は、今後の営業計画にもアドバイスをもらいたい。
さらにはどんな宣伝が今の時流に沿ったものになるかを相談したい。
早いうちに従業員も員を採用したいので、面接のコツを教えて欲しい・・・

 当事者からすれば、起業に関係する一連の流れの中の業務の相談と考えます。
先の相談の延長線上の位置づけで、今回も満点回答の期待感を持つわけです。

 ですが、書類作成や申請手続きに長けている方が、同時に営業センスも持ち合わせている、
宣伝に関しての専門知識を有している、人事採用の経験がある、わけではありません。

 中には、奇跡的に複数の案件でいい結果を残せる場合も、ないわけではありません。
ですが、その確率はかなり低いものです。

 相談者側が、意識しておくべきは
「当初の課題を解決してくれればそれで十分。」と割り切ることです。
「その場限りの関係で、貴方のノウハウだけを利用させてもらう。」

 微妙な距離感を保った信頼関係に留めることが、私は望ましいと考えます。

 「利用」という言い回しに抵抗があるならば、「活用」と言い換えてもいいです。

 人間どうしても楽な方に目が向きがちです。
出来れば一人の方に全て丸投げでお願いしたい、という考えを持ちがちです。

 いちいち、事情説明を繰り返さなくてはいけない。
 複数の人間に相談事を公表しなくてはいけない。
 また初めから人選をしなくてはいけない。

 など等、確かに手間と時間がかかることは否定しません。

 ですが、繰り返しになりますが、
その課題に対しては最適解を導き出したからといって、
全ての悩みや課題にも同じ結果が期待出来るとは言えないのです。

 といいますか、
「何でも聞いて下さい、全てお任せを」と謳っている場合、
却って問題を生じさせることが多いくらいです。

 適材適所という言葉は、相談時にも通用する言葉です。 
特に再就職や起業・独立等といったその後の人生を左右するような課題を、
ひとりのアドバイスや提案だけで決めてしまうのは非常に危険です。 

「今回の起業に当たり、この方を経営アドバイザーとして迎え入れることにしました。」
「自分は長く上場企業の管理職として経験を積んできたので、人を見る目には自信があります。」
「この方とパートナーを組んで起業すれば、成功は間違いありません。」

 このように、人を見る目には自信があるという場合ほど、あっさりだまされたり、
傍から見ればその場しのぎでしかないという話に執着しがちです、何故でしょうか?

 確かに会社員として、管理職として
培ってきた経験やスキルは間違いないものだと思います。
ですが、それによって最適な判断を下せるのは、仕事関係の範囲の人脈であればこそです。

 心機一転、異業種での起業・独立をもくろむ場合、
相手となるのは今まで未経験の分野で活躍した人物です。

 さらに悪い出会いになれば、
新米起業家に群がるのは概ね、悪意ある第三者というケースはかなり多いのです。

 そのような手練手管に長けた強者を見抜けるほどのスキルがあればいいのですが、
自信のある方ほど、自分が下した判断や決断はなかなか否定、修正が出来ません。

 あくまでもビジネスライクに、
「この問題への対処については利用して正解」だった
「うまく活用することが出来た。」といったスタンスに留めておけば、
傷口を不必要に拡げてしまうリスクは避けることが出来ます。


 こんな見事に問題を解決してくれた=どんな問題も解決してくれるではないのです。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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