民法と税法 3 時効取得(財産を時効取得したときの税金と時効取得の時期)
1.財産分与が、分与者の譲渡所得の起因になるとする判例(昭和50.5.27最高裁第三小法廷判決)の言う理由
同判決は、「夫婦が離婚したときは、その一方は、他方に対し、財産分与を請求することができる(民法768条、71条)。この財産分与の権利義務の内容は、当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまつて具体的に確定されるが、右権利義務そのものは、離婚の成立によつて発生し、実体的権利義務として存在するに至り、右当事者の協議等は、単にその内容を具体的に確定するものであるにすぎない。そして、財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。してみると、本件不動産の譲渡のうち財産分与に係るものが上告人に譲渡所得を生ずるものとして課税の対象となるとした原審の判断は、その結論において正当として是認することができる。」というもの。
2.登記手続が未了の場合
離婚が成立し、財産分与の約束ができたが、財産分与を原因とする不動産の移転登記手続をしないまま、国の徴税権の消滅時効期間が経過した場合、はたして国は徴税権を行使できなくなるのか?
国税局の見解は、そのような場合は、まだ分与者の「財産分与義務が消滅した」とは言えないので、徴税権は消滅時効にかかっていない、との見解を示している。
特に説明は要しないであろう。



