大切にしたいもの 15 貞潔
大切にしたいもの ー 民主主義と法治主義
これを大切にしたいと言うと、当然のことを何故いま?という疑問を持たれる人がいるかもしれません。しかし、2013年に発刊されたノーベル経済学賞受賞者2名の共著「国家はなぜ衰退するのか」を読むと、民主主義と法治主義の重要性を再認識されるのではないかと思います。
この本によりますと、フェンスから成る国境を境に、北側にあるアメリカのアリゾナ州ノガレスと南側にあるメキシコのソノラ州ノガレスとでは、次のような違いがあるようです。
アメリカ領ノガレスでは、住民の平均的世帯の年収は3万ドル、ティーンエイジャーのほとんどは学校に通っている、大半の大人は高校を卒業している、平均寿命は世界的基準からしても長く、住民は高齢者向け保険(メディケア)が利用できている、電気、電話、下水道、アメリカ国内どこへでも自由に行ける道路網が利用できる、大切な法と秩序がある。
これに比べると、南側にあるメキシコ領ノガレスは、メキシコとしては比較的裕福な地域であるが、平均的年収はアメリカのノガレスの3分の1しかなく、大人のほとんどは高校を卒業していない、乳幼児の死亡率は高い、公衆衛生は劣悪で北の隣人に比べ長生きできていない、彼らの多くは公共施設の利用はできていない、道路はひどく荒れており法と秩序は乱れており犯罪率は高く、事業を始めるのは危険である、強盗に遭う危険があるばかりではなく、事業を始めるためだけに多くの許認可を得る必要があるがそれを得るには賄賂を贈る必要がある、それだけ政治家の腐敗がひどい(ただし、メキシコは2000年以降政治改革に着手はしているとのこと)などが書かれています。
なお、北の住民も南の住民も、同じ先祖を持ち、1853年までは一つの街の住民であったとのことです。
以上をここで紹介するだけで、民主主義と法治主義は、私たちの第2の天性ともいうべき重要なものであることが理解できるものと思われます。
それだけでなく、経済の発展がないと国民の生活は苦しいままであること、経済を発展させるためには、技術やサービスの創出・発展が必要であり、そのためには公正な競争と適正なインセンティブの確保が保障される必要があること、さらにそのためには民主主義と法治主義が確保されている必要のあることも理解できるはずです。



