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1 都市計画法上の位置づけ
市街化調整区域とは、「市街化を抑制すべき区域」のことである。
なぜ市街化調整区域が設けられたかというと、戦後の高度成長期になって人口増加が著しい都市部近郊で住宅地の乱開発が多くなってきたことから、乱開発を阻止し農地を保護する必要が生じたことによる。
農地を許可なくして非農地にした者は、犯罪になるほど、農地の保護の必要性は大きいのである。
乱開発を阻止して農地を保護するため、昭和40年代に入って、全国の政令指定都市や県庁所在地、中核市などの比較的大きな自治体で市街化調整区域を設けるようになった。
すなわち、都市計画区域を「既に市街化を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」(市街化区域)と「市街化を抑制すべき区域」(市街化調整区域)に線引きし、市街化調整区域での乱開発を阻止し農地を守ることにしたのである。
岡山市の場合は、昭和46年9月7日に線引きがなされた。
2 「線引き」と「線引き前宅地」の意味
「線引き」とは、市街化区域と市街化調整区域と隔てる線をいう。
「線引き前宅地」とは、線引き前から市街化調整区域で宅地になっていた土地のことである。
この土地は、線引き前は開発許可を受けることなく建物の建築ができた土地である。
線引き後も一定期間「既存宅地」として開発許可を受けずに建物の建築が許された期間があったが、平成18年 5月18日 以後は既存宅地制度もなくなった。
したがって、同日 以降は、線引き前宅地でも建物を建て替える場合は、開発許可が必要になったのである(その一つが「50戸連たん制度」である)。
もう一つは、次に述べる「2号宅地」である。
3 2号宅地
市街化調整区域であっても開発許可なく建物を建てることができる場合がある。それは都市計画法29条1項ただし書2号に該当した場合である。すなわち、「農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの」である。
この規定は、宅地の乱開発を阻止し、農業など第一次産業を保護する目的で創設された市街化調整区域の目的から定められたこと言うまでもない。
4市街化調整区域における開発行為の規制
このようにして誕生した市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であるため、原則として用途地域は定められず、市街地開発事業など市街化を促進するための都市計画も定められていない。
しかし、例外的に開発行為を許す必要はあるところから、用排水路等公共施設の管理者の同意(法32条)を得た公共施設の改修工事内容を含む、技術的基準(法33条)及び立地基準(法第34条)を満たした、資格ある者が作成した設計図と仕様書(法31条)に基づく開発行為のみが許可されることになっているのである。
5 開発行為
開発行為とは、土地の「区画の変更」「形状の変更」及び「形質の変更」をいう。「区画の変更」とは、敷地内に新たに道路を設置するなどの行為のこと、「形状の変更」は、一定の高さ以上の盛り土や切り土のこと、「形質の変更」とは、宅地以外の土地を宅地に変更することをいう。なお、ここでいう「宅地」とは、建物の敷地に供される土地のことである。