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ロビー活動の功罪やいかん

2022年6月9日 公開 / 2022年7月27日更新

テーマ:法令満作

コラムカテゴリ:法律関連

いささか旧聞に属する話ではあるが、2017年(平成29年)6月に住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が制定された。これにより、それまではできなかった宿泊を希望する顧客と民泊用建物を提供する建物所有者間を、アプリを使って結びつける、民泊事業の事業化が可能になった。日本経済新聞2020/12/29付け記事「日本企業、また敗れるのか 眠れる法務を放置するな」によれば、これはエアービーアンドビー(2008年8月に設立したばかりの米国の新興企業)が日本で事業を展開するため、同社の法務部を働かせて、勝ち取った法律だとのことだ。
恐るべし米企業、恐るべしロビー活動、というべきか。

なお、米国では、企業がロビー活動に相当の金額を使い、法律を作らせる努力をしているようだ。
日本経済新聞2021/01/31付け「フェイスブック、ロビー費首位にIT大手、米政府圧力に対応 中国バイトダンスは10倍 」の記事によると、GAFAの1社であるフェイスブック(現商号は「メタ」)の20年のロビー活動費は前の年より18%多い1968万ドル(20億円超)となり、初めて民間企業で最多になったことが報じられている。
このロビー費の大きさから、米国企業の強さの一端を垣間見た思いがする。

では、日本の場合は、ロビー活動はどの程度なされているのであろうか?
と思って、インターネットのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を開いてみると、日本では、ロビー活動が利権団体と政治家との癒着・買収の一形態というイメージが強く、有権者からは快く見られないことから、表立って行われることはない、とのことだ。

前記日本経済新聞記事は、日本の企業に対し「眠れる法務を放置するな」と叱咤している。
これは、日本においては、アメリカに比べ、法務が、企業のために十分な力を発揮していない、ということだが、日本の法務を、眠りから醒まさせる方策やいかん?
また、ロビー活動の功罪を、分かりやすく論じる論説はないものであろうか?

追補
2022年7月24日の日経新聞電子版「米IT大手、ロビー費最高 1~6月、独禁法など攻防激化」によると、米IT(情報技術)大手のロビー活動費が急増し、主要5社は2022年1~6月に前年同期より12%多い3598万ドル(約48億円)を投じ、過去最高を更新したとのこと、また、アップルは前年同期より一気に5割近く増やしたとのこと。背景に、反トラスト法(独占禁止法)の改正などをめぐる攻防激化があるとのことだ。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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