38.社外取締役の有用性の認識が広がってきたが・・・
10 救済M&A後の進路も難路
東芝は、債務超過に陥った後、アクティビスト(物言う株主)で有名な投資ファンドから全体の3割に相当する出資を受け債務超過からは脱しえたが、以後、明確な経営哲学をもった経営者はいなかったからか、家電や医療機器や半導体メモリーなどの主力事業を次々に売却するも、成長投資はできない状況下に置かれることになってしまっていた。
そのような中の2023年9月21日、投資ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)と国内連合20社超による東芝へのTOB(株式公開買付け)が成立し、東芝は救済されることになった。
新しく出資した株主には、スズキ、ローム、大成建設、中部電力、鹿島などの優良企業の名が並んでいる。
やがて、東芝は、年内にも上場を廃止するようであるが、これは、雌伏の期間を設けて力を付け、やがて天の時いたらば、雲を呼び天に飛翔する蛟竜の思いなのであろう。
ただ、前途は難路が待ち構えているのだろう。
すなわち、日本経済新聞2023年9月22日付け「東芝、パワー半導体・再エネが柱に 出資元と連携 小粒事業多く、再建に課題」によれば、東芝に対する今般のM&Aの成立を見たと同じ21日、格付投資情報センター(R&I)は、東芝の社債の格付けをトリプルBマイナスに1段階引き下げたことを報じた。
これは、今回のTOBでJIPがした約2兆円の買収資金のうち1兆2000億円は銀行融資でまかない、その債務は東芝が銀行へ返済する仕組みになっていることが、マイナス評価を受けたためのようである。
TOBで救済されるということは、依然として厳しい現実が続くということなのだろう。
しかし、やがて東芝は、雲を呼び天に飛翔する時期を迎えることは間違いないであろう。