12.事件・事故は、萌芽の内に摘み取るべし その方法論
24 社外取締役を働かせる具体論 その1
(1)委任契約の締結
①会社と取締役との関係は、委任契約であるので、委任契約書を2種類つくる。
一つは、社外取締役全員との間での、取締役会に出席するなどの定型契約。
もう一つは、特定一人の社外取締役との間での、非定型の「危機管理システムのチェックおよび改善提言」委託契約。
②報酬は、定型契約の場合は、会社基準による。
非定型の契約の場合は、成果報酬に重点を置き、別途合意の上定める。
③なお、社外取締役に非定型契約を結んでも履行する能力がないと会社が判断した場合は、別に弁護士を探し、その弁護士と委任契約を結ぶ。
(2)非定型の「危機管理システムのチェックおよび改善提言」委託契約
①契約期間は6か月とする。
②3か月経過しても、成果がないと考えるときは、契約を解除できる条項を入れる。
能力のない者に委託したことが分かったときは、早めに解除して別の受託者に仕事をさせる必要があるから。
③受託者になる社外取締役または外部の弁護士には、フリーハンド(④のこと)を与える。また、公認会計士や他の弁護士を補助者として使うことを認める。
➃委託を受けた社外取締役または弁護士は、上場会社の数多い業務の中から、1件だけを絞って調査をする。
何を調査するかは、当該上場会社の置かれた業種に起きがちな事件・事故(マスコミ報道でゴマンとある)を考え、また、公益通報者保護法などもあるので集まってくるであろう内部情報などから決めればよい。
⑤ その非定型契約が履行された後は、さらに別の社外取締役または別の弁護士との間で、次の契約を結ぶ。
1事業年度内に6か月単位で2度、このような契約を毎年度するのである。
(3)費用対効果抜群
2023年4月17日、大手ゼネコンの大成建設が建設中の高層ビルで、鉄骨の柱や梁に基準を超えるずれが複数発見されたこと、その精度について会社側は発注者に対し虚偽の数値を報告していたこと、そのため、大成建設は中途まで出来上がっていたそのビルを取り壊すことになったこと、そしてそれにより同社は240億円の損失を計上することになった、ことなどが報じられた。
2022年に発覚した日野自動車の排ガスデータねつ造事件でも、日野は内外とも取引ができなくなり多額の損失を出した。
かつての名門企業雪印食品など、廃業するに至った。
各上場会社が、ここでいう非定型の契約を結び、100億円単位の損失の発生や廃業を未然に防げるものなら、ここでいう非定型契約の費用対効果は抜群である。