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第2章の2 クライシス・マネージメント

菊池捷男

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テーマ:企業法務の勘所

3 クライシス・マネージメント

  大阪高等裁判所平成18年6月9日判決は、ドーナツの製造販売会社が、食品衛生法では使用が認められていない添加物を使用した商品を販売したことが発覚した後、それを公表すべき「クライシス・マネージメント」があったのに、それをしなかったことを過失だとして、10名以上の取締役に対し合計53億円に登る損害賠償を命じた。

すなわち、同判決は、
「国民生活センターの実態調査によると,早期の製品回収によりその企業やブランドに対する信頼がかえって高まるという回答が半数近くある。その他,いわゆるクライシスマネージメントにおいて,公表を回避することによる不利益が強調され,早期公表・説明の重要性が説かれていることや,それを実証するような具体的なケースが多数存在することは明らかである。そうすると,仮に積極的な事実の公表が周到な準備のもとになされた場合には,現実に生じた損害のうち相当程度のものが回避し得た可能性があったものと推認することができる。」と判示したのである。

 なお、この法理は、最高裁でも支持された。
また、日本経済新聞2008年2月13日付け「ダスキン社株主代表訴訟―旧経営陣、53億円賠償確定」という見出しの記事で、大きく報道された。

 この判決により、会社は、危機が発生した場合の処置であるクライシス・マネジメント(損害の拡大を阻止するマネジメント)に関する規程も整備しなければならないことが明確にされたのである。

これにより、企業は、前門の虎はリスク管理システムで守り、後門の狼はクライシスマネジメントで守ることが必要になったのである。

なお、危機が発生した場合に、公表以外の処置も、併せて、会社の規程にすることも検討すべきであると思われる。

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菊池捷男(弁護士)

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