第1章の5-2 企業内研修の要あり
企業法務(企業・法人が扱う法律事務)は、膨大である。
ゆえに、その全貌を知り、かつ、理解することは、不可能である。
しかし、企業法務には、勘(かん)所(どころ)とでも言うべき大切な視点・急所がある。
その勘所を押さえることができれば、見えてくるものがある。
茫々千里の浜も、砂だけを見ると、記憶に残るのは茫々千里の浜でしかない。
我が身を置いた場所など、後で思い出すことはできない。
しかし、目を海に転ずれば、そこには、あまたの奇岩怪石が見える。
その中で記憶に残る奇岩怪石があれば、我が身を置いた場所は、容易に思い出すことができる。
勘所とは、茫々千里の砂浜の中で、わが身を置いた場所を知る導(しるべ)である。
また、六法全書を全文暗唱できたとしても、今そこにある問題の解を得ることはできない。
法律の教科書、専門書、判例の全てを読んでも、同じである。
言葉のジャングルに入れば、言葉(奇木、珍木、銘木の類)が見えなくなるからである。
必要なのは、企業が欲する奇木・珍木・銘木の類を照らす一条の光である。
勘所とは、そういう道標である。
国際競争力の低下、企業不祥事の増加、急激な円安が、今、日本を襲っている。
企業法務の重要性は、昔日の比ではない。
勘所を知り、あるべき企業法務を確立することこそ、今、求められているのではないだろうか。
(注意事項)
なお、本連載コラムは、書く内容が増えるに従い、すで書いた内容についても、随時、編集し直すことがあることをお断りしておく。