二項対立は、アウフヘーベン(止揚)することが肝要
法律家は、すべからず、名著「過失犯の構造」を読むべし!
九州大学の刑法の教授であった、井上正治(まさじ)が、 日本刑法学会選書 1 「過失犯の構造」を著したのは、1958年12月であった。
A5判 282ページから成る名著だ。
この本は、法曹界で一世を風靡した。
私が初めてこの名著を知り、読んだのは司法修習生の時だから、創刊後、11~2年経ったからだが、私は、この本に魅了されてしまった。
時間の経つのも忘れて読んだ。
食事をすることも忘れて読んだ。
法律の、いな論理の、面白さに引き込まれてしまったのだ。
私の場合、法律が面白いと思った名著に出会うことができたのは、数としては極めて少ない(不勉強故だ)。
その少ない名著の一冊がこの本だ。
なお、現在、インターネットでこの本を探すと、「過失犯の実証的研究を中心として、在来の過失犯理論に鋭い反省を加え、近代社会生活の複雑化に相応する新分野の開拓を目指す力作」と紹介されている。
まだ読んでいない法律家は、この本を読むべきだと思う。
発刊後、60有余年経っているが、その新鮮さには感動すると思われる。
なお、過失犯の構造といっても、過失が問題になるのは、刑法よりも、民法の世界だ。
刑法でも、民法でも、「過失」概念は重要だが、私の学生時代も司法修習生時代も、「過失」論を取り上げて教えられることはなかった。
むろん司法試験の問題になることはなかった。
いわば、「過失」論は、枝葉の枝葉のような扱いを受けていたが、今は、どうであろうか。
今はどうであれ、実務では「過失」概念は極めて重要だ。
若い弁護士には、この本をお薦めしたい。
この本を、読めば、過失論が、実におもしろくなると、私は確信する。
また、訴状の文章が輝き出すこと、間違いない。