コラム
ロータリー22 多様性と学問(1) ――獣医学部問題で見えた、日本の学問の阻害要因――
2021年9月26日
2017年。国会論議とマスコミ報道で学校法人の獣医学部新設問題が生じました。この問題には、論者たちが提起した論点よりも、もっと大きな論点のあることを、白(はく)日(じつ)の下(もと)にしたように思います。
それは、①日本には、過去52年間も、新しい獣医学部の設置は必要ないとして認めなかった事実があったこと、②その規制は法律による規制ではなく、一人の政治家の名を冠した4原則なるものによること、③この4原則を通過することは、駱(らく)駝(だ)が針の穴を通るより難しいと言われるほどの規制=岩盤規制であったこと、④さらには、この政策を継続することが正義であるかのような論調のあることが、分かったからです。
52年間も、科学の分野で、いな学問の分野で、特定の研究については研究所や学問の府(要は、獣医学部の新設)は必要ないという思想が、否それを許した行政の現実があったことに、驚いた人は多かったのではないかと思います。
このときの獣医学部新設は、時の政権が、岩盤規制を破壊したから実現できたものの、他の研究分野ではどうなのでしょうか? 気になるところです。国際競争の激しい中、岩盤規制のある分野では、日本は相当立ち後れてきているのではないかと心配です。日本にGAFAMのような企業群が育たない理由は、いろいろあると思いますが、この獣医学部問題は、害こそあれ益なき規制、岩盤規制を探しだし、それを破壊する必要性を、教えてくれたように思えます。
2020年。動物由来の新型コロナ・ウイルスのパンデミック(感染症の世界的流行)が発生しました。これは人間の住む世界の明日のことは、一寸先が闇、何が起こるか分からないことを教えてくれています。それだけに、2017年に起きた獣医学部新設問題で、新たな獣医学部の設置は必要がないといった行政や論調のあったことは、信じがたい冗談を言われたような気がします。
学問とは何か? 次のコラム52は「吃音(きつおん)による言語障害を直す学問」、その次のコラム53は、ロータリー学とフランチャイズシステム学が誕生した経緯について記しました。学問とは何か?を考えるために。
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