使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
研修費用や資格取得費用の回収方法
Q 会社が、会社の費用で、従業員に、研修を受けさせたり、資格を取得させる代償として、従業員は、一定期間は会社に勤めること、もしそれより前に会社を辞めたときは、会社に資格取得の費用を返還するという支払約束(契約)を結ぶことはできますか?
A
労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定していますので、契約に違反して早期退職したときは違約金を支払うという契約は無効とされます。
しかし、研修費用や資格取得費用を、会社が従業員に貸し付けた(金銭消費貸借契約を結ぶ)場合の回収は可能です。
ただし、従業員の研修や資格の取得が、会社の業務命令によるものならば、研修や資格取得費用の貸付は、業務性を有するものになり、その支払約束は、労働基準法違反の損害賠償予定に該当し無効になります(東京地判平成10年3月17日など)。
ですから、本来本人が費用を負担すべき自主的な修学(技能習得)や資格取得についてのみ、会社(使用者)がこれらの費用を貸与し,就職後一定期間勤務すればその返還債務を免除する,という実質のある契約であれば、賠償予定禁止の違反ではないとされ、その支払約束は有効とされます(東京地判平成9年5月26日,東京地判平成14年4月16日など)。
なお、海外留学費用に関しては、一定期間勤務後に返還を免除するという内容の留学費用貸与契約書は、当事務所でもひな形を作っております。