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新著 第1章 ホールディングス

菊池捷男

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テーマ:菊池と後藤の会社法

出版案内(概要)

第1章 ホールディングス

その激流の時代の今、ホールディングスが増えてきた。
何故か?
その解は、時代が、それを求めたことにある。
では、ホールディングスとは何か?
それを求めた時代の求めとは何か?

1.ホールディングスとは、純粋持株会社のこと
すなわちドイツ語でいう「コンツェルン」、日本でいう戦前の財閥のこと。

2.財閥の解体
わが国の財閥は、戦後間もない1947年(昭和22年)に独禁法の制定で設立が禁じられた。

3.財閥解体は日本だけ
第二次世界大戦の他の敗戦国であるドイツもイタリアも、財閥は解体されなかった。

4.アメリカからの年次改革要望書
1961年(昭和36年)、アメリカの財界とわが国の財界は、「日米財界人会議」を発足させ、1993年(平成5年)政府間で「年次改革要望書」を交換して
アメリカからの具体的な制度設計に関する政策提言ないし要望をしあう関係ができた。この関係は、日本の法制度に、多大な影響を与えている。

5.日本版金融ビッグバン誕生の秘話
1996年(平成8年)アメリカがわが国に金融市場の開放を求めた。当時、わが国の民間金融資産が1200兆円を超えたなどといわれ、アメリカの金融機関や証券会社にとって、これが垂涎の的になったことによる。わが国は、これを機に、イギリスに倣(なら)って、金融市場の開放を積極的に行い、ゆくゆくは東京を、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ、世界の金融センターに育てようとし、広範囲かつ大規模な金融・証券市場の改革をすることにし、「日本版金融ビックバン」と銘打ったもの。その意図の下で、日本はホールディングスの解禁をアメリカに認めさせ、金融ビッグバンを受け入れた。
 
6.ホールディングスという名称の使用
わが国で純粋持株会社が解禁されたのは、金融ビッグバンを受け入れた翌年になる、1997年(平成9年)の独禁法の改正の時。それ以後、純粋持株会社が多数設立された。以後、ホールディングスやファイナンシャルグループという言葉が商号に使われるようになった。

7.ホールディングスをつくるメリット
①効率的経営、②責任の明確化、事業ごとのリスク分散、実情に即した人事制度の構築、敵対的企業買収からの防衛、⑥税法上のメリット(後述)がある。

8.ホールディングスをつくる方法が制度化された         ①会社分割、②株式交換、③株式移転

9.地銀の経営統合
ふくおかファイナンシャルグループ(FFG)が長崎県の十八銀行を、傘下の子会社にしたケースで解説。ここでの経営統合は、ホールディングスの傘下入りを意味する言葉として使われている。

10.メーカー間の経営統合の例
新聞記事によれば、日立が子会社3社を完全子会社にし、ホンダの完全子会社がこの3社を吸収合併する経営統合計画を発表したと報じたが、この経営統合スキームでは、日立が子会社3社の完全親会社(ホールディングス)になることが、重要な要素になっているのだ。

11.IT企業間の経営統合
日経19/11/19の記事「IT巨人に危機感 ヤフー・LINE来年10月統合」によれば、アメリカのGAFAや中国のAI(情報技術)企業などのプラットホーマーの後塵を拝している日本のIT企業同士で、規模の拡大を目的に経営統合がなされることが報じられた例などがある。

12.経営統合と独禁法上の結合規制
先ほど説明した地銀の経営統合は、独禁法上の結合規制を受けることになった。経営統合については、国としても、新産業の育成や成長という課題と独禁法の規制をどう整合させていくか難しい舵取りが問われることになるだろう。

13.税法上のメリット
会社分割がなされると、法人税法では、この時、分割会社に譲渡損益が発生するのが原則だ(法人税法62条)。しかし、一定の要件を満たした適格分割の場合は、資産・負債は分割会社の帳簿上の価額で承継されるので、譲渡損益は生じない、という課税の繰延べが認められ、会社分割時点では税金問題は生じないのだ。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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