配偶者居住権の存続期間
10 根本的な問題 懲戒処分をする必要性
(1)13年議決は、全相続財産を相続人甲に相続させるという遺言の執行者になった弁護士を、その弁護士が受遺相続人甲の代理人になって、相続人乙からの遺留分減殺請求と対峙したことを理由に懲戒議決をした。
しかし、このときの弁護士が、受遺相続人の代理人になったからといって、相続人乙に不利益はなんら生じない。
何故、この弁護士を懲戒処分にしなければならなかったのか?
この疑問には、日弁連懲戒委員会は一切答えていない。
(2)18年議決は、「相続させる」遺言の遺言執行者になった弁護士が、受遺相続人の代理人になって、遺言無効訴訟を起こした相続人と対峙したを理由に、当該弁護士を懲戒にすべきだと議決した。
しかし、このときの遺言執行者になった弁護士が、遺言の無効を主張する相続人と対峙したからといって、遺言の無効を主張する相続人にはなんらの不利益を与えるものではない。
それだけでなく、遺言執行者は、本来、遺言の無効を主張する相続人がいれば、遺言の有効性を主張して遺言無効を主張する相続人と争うべきが職務と思われるのに、日弁連懲戒委員会は、遺言執行者になった弁護士を懲戒処分にしてそれを阻止しようとした。何故か?日弁連懲戒委員会は、その疑問にはなんら答えることをしていない。
(3)21年議決は、相続人の廃除をする義務を負った遺言執行者になった弁護士が、それをする立場に立ったことを捉えて、「遺言執行者の中立・公正性を疑わせることをした」と断じたが、では日弁連懲戒委員会は、①当該弁護士は、相続人の廃除をすべきでなかったというのか?②他の弁護士が遺言執行者になった場合でも、相続人の廃除の遺言執行者は許されないというのか?③受遺相続人の代理人になった弁護士が遺言執行者となった場合のみ、相続人の廃除は許されないというのか?④前問が是とされるときは、その理由は何か?という疑問には何ら答えていない。
(4)このほか20年議決や26年議決もそうであるが、日弁連懲戒委員会は、弁護士が受遺相続人の代理人になりかつ遺言執行者になったことを理由に、これら弁護士全員を懲戒処分相当であると議決した。
これら5件の懲戒議決は、それをすることで守るという相続人の利益はないのにである。