民法雑学 心が傷つけられたとき
1 被写体となった人物の権利
(1)権利の内容
ア 肖像権
肖像権とは,「みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益」のことをいいます(最大判昭和44年12月24日)。また,「人は,自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有する」とされています(最判平成17年11月10日)。
イ パブリシティ権
パブリシティ権とは,「肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利」のことをいい,「肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成する」とされています(最判平成24年2月2日)。
(2)相続の対象になるか
これら肖像権やパブリシティ権は,法律上の根拠条文はないが判例上認められた、人格権に由来する権利であるとされていますが、当該個人にのみ認められる権利と考えられ、相続されることはないものと考えられます(判例はない)。
(3)無断撮影、無断展示
無断撮影を禁ずる法律はありませんが、無断展示は上記権利の侵害になりますので、差止請求が可能です。
2 撮影者の権利
(1)著作権(展示権)
写真は「著作物」とされており(著作権法10条1項8号),撮影者は,未発行の撮影した写真につき展示権という著作権を有しています(同法17条1項,25条)。そのため,撮影者(著作権者)は、1の問題をクリアすれば写真の展示権はありますが、第三者は、著作権者の許諾なく,当該写真を展示することはできません。
写真の著作物については,「原作品の所有者又はその同意を得た者は,これらの著作物をその原作品により公に展示することができる」と規定されています(同法45条1項)が、ここでいう「原作品」とはネガではなく,ポジであると考えられています(中山信弘「著作権法」95頁)。
(2)著作権の保護期間
著作権の保護期間は著作者(写真の場合は撮影者)の死後70年です(著作権法51条2項)。なお,保護期間は,平成28年12月30日に著作権法改正法が施行された結果,50年から70年に延長されており,原則として,昭和43年(1968年)以降に亡くなった方の著作物の保護期間は70年となっています。
3 権利者の許諾を得ようと思っても権利者と連絡がとれない場合
この場合は、「権利者の許諾を得る代わりに,文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより,著作物を適法に利用することができます(第67条,第67条の2,第103条)。詳細は文化庁ウェブサイト(http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/)を御覧ください」(文化庁ウェブサイトより引用)。