契約書 賃貸借契約で「公租公課は貸主が負担する。」との約定の意味
本日付すなわち令和元年5月17日付けの日経新聞に、「中小の知財 大手が奪う」という見出しで、大企業が取引先の知財を巧妙に奪っている様子が描かれているが、その中に、「中小企業がチェックしきれないような抜け穴を契約書につくり、大企業が技術を合法的に奪う事例も出てきた」(日本商法会議所)との記事が出ている。
これは私も、最近、感じてきたことだが、今、大企業といえども、結構、小ずるいことをすることが目につく。
相手方会社には、軽過失でも当然のこととして責任を負わせるのはいいが、自社には「故意又は重過失」がある場合しか、責任を負わないという規定を、実に巧妙な方法で入れるなどしているのである。
その巧妙な方法とは、契約当事者双方とも、「故意又は重過失がある場合のほかは、責任を負わない。」という、一見、契約当事者双方とも平等の扱いにするという規定を置き、まず、自社の責任が生じないようにしている。すなわち、通常の取引では「重過失」が認められるケースはほとんどないので、「故意又は重過失がない限り責任を負わない」ということは、大企業には債務不履行があっても一切責任を負わないことになるのだ。
でも、他方当事者にも「故意又は重過失」がない限り責任が生じないことになるので、お互いさまだろうと思うかもしれないが、そうではない。この大企業が作成した契約書(案)では、大企業にとって重要な他方当事者の義務を定めた規定の中に、軽過失であっても責任を負うという規定を置いているのだ。さりげなく。
長文の契約文章の中に、実にさりげなく、だ。
普通の人が、この契約書を一読しただけでは、相手方会社には軽過失でも責任が生じ、その大企業は軽過失の場合は責任を負わないという、相手方会社には極めて不利な内容であることに気が付かないかもしれない。
そのような契約書が、最近、契約書チェックをしていて発見した。
むろん、上場会社がすべてこのような契約書をつくるものではない。
本コラムで、ヤマト運輸が作った契約書が、見事なほど大企業の矜持がよく表れた契約書だと紹介したことがあるが、そのような良心的な契約書がある中、そうでない契約書も目に付くようになっているのだ。
自社の責任で相手方に損害を与えたても、実に少額の一定の限度でしか負わない規定、宅建業違反の売買契約の媒介が失敗しても委託料を支払うなどという契約書も多くなっている感がある。
いささか、品のない契約書が増えている感があるのだ。