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建物買取請求権が認められる要件

菊池捷男

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テーマ:不動産法(賃貸借編)

1借地権設定契約における借地権者の建物買取請求権
 借地借家法第13条は「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」と規定しています。

 この趣旨について、東京地方裁判所平成13年11月26日判決は、「借地借家法13条1項の建物買取請求権の趣旨は、いまだ経済的効用をもつ建物が取り壊されることを回避するという社会経済的要請や借地人が借地上の建物等に投下した費用を回収するなどのために認められた制度である。」と判示しています。
 ですから、建物買取請求権の対象になる建物は、それなりに価値のあるものになってきます。
価値なき物を買えという権利はないのです。

2 老朽化した建物の場合
 前期判決は、続けて「そうすると,本件では、本件建物は老朽化の傾向にあるのであって、公衆浴場という用途、その建築に高額の費用を要すること等を考慮しても、その取壊しによって社会経済的損失が著しく大きなものになるわけではない。また、本件建物は公衆浴場という特殊な用途にしか使用できないものである上、老朽化傾向のある本件建物を今後継続して公衆浴場として使用するにはかなり困難が伴うものといえるから、仮に被告が本件建物を買い取ったとしても、公衆浴場として利用することは難しく、早晩自己の費用で収去をせざるを得ない状況にある。したがって、建物の取壊しを回避するという社会経済的な要請を実現することもできないことが予想される。」などの理由で、「本件において、仮に本件建物等買取請求権が認められたとしても、原告がそれを行使することは、借地借家法13条1項の建物買取請求権の制度趣旨に照らし、その権利濫用に当たるというべきである。」と判示しています。
 ですから、老朽化して、取り壊すほかないような古い建物については買取請求権は認められません。

3実務上権利が問題になることの少ないのは・・・
 実務上、この規定により建物買取請求権の行使の例は、極めて少ないという印象を持ちますが、この権利が認められるケースが少ないからなのだろうと思われます。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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