一字違えば意味違う (相続放棄と相続分の放棄)
弱き者よ、汝の名は女なりというセリフは、昔むかしの、しかも遠い遠い異国のハムレットの言葉だが、今の女性は、ずいぶん強い。とくにわが国の、妻たる身、親たる身は、まことに強い。
その妻に、更なる力を与えんとする強力な助っ人が現れた。すなわち、平成30年7月6日の相続法の改正で創設された配偶者居住権だ。
配偶者居住権は、妻が自宅を相続する場合、価額が高くなり、他の遺産、例えば預金などが十分にもらえないことを慮(おもんばか)った法律が、価額の安い配偶者居住権を創設することで、妻に、自宅に引き続いて無償で住む、しかも、価額の安い配偶者居住権を取得させ、預金など他の遺産も、老後の生活を維持するに足るものたらしめようとの温かくも優しい政策として、もうけたものであるが、なんと、婚姻期間20年以上の夫婦の間でする配偶者居住権の遺贈は、遺贈の持戻しを免除する意思の下でなされたものと推定するという規定までもうけたのである。
この立法を考えついた人は、恐らく、よほどの愛妻家か、極端な恐妻家というべきかもしれないが、真相は藪の中、詮索の必要はあるまい。