遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで⑥
第3節 遺言の効力
相続法第7章第3節は「遺言の効力」と題する節ですが、最初に遺言の効力の発生時期を規定した第985条が置かれたほかは、次の第986条から第1013条まで実に30条近い数の条文の全て、遺贈に関する規定になっています。その内容は、実に詳細なものですが、本書では、実務に出てきそうなもののみを取りあげ、その他の説明は割愛いたします。
【条文】
(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
(遺贈の放棄)
第986条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告)
第987条 略
(受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄)
第988条 略
(遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第989条 略
(包括受遺者の権利義務)
第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
(受遺者による担保の請求)
第991条 略
(受遺者による果実の取得)
第992条 略
(遺贈義務者による費用の償還請求)
第993条 略
(受遺者の死亡による遺贈の失効)
第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 略。
(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第995条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(相続財産に属しない権利の遺贈)
第996条 略。
第997条 略。
(不特定物の遺贈義務者の担保責任)(遺贈義務者の引渡義務)
第998条 略
(遺贈の物上代位)
第999条 略
第1000条 削除
(債権の遺贈の物上代位)
第1001条 略
(負担付遺贈)
第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(負担付遺贈の受遺者の免責)
第1003条 略
【解説】
1遺言の効力の発生時期
遺言の効力の発生時期は、遺言者(被相続人)が亡くなった時です(985①)。
その遺言に、条件(例えば、受遺者が結婚したとき)が付いているときは、条件が成就した時に効力が生ずることになります(985②)。
2 遺贈の放棄
遺贈は受遺者に強制できるものではなく、受遺者は遺贈を受けることを拒否できます(986)。
この点、遺産分割方法の指定遺言の場合とは異なります。その違いについては、後述します。
3 負担付遺贈
遺贈は、無償で相続分を遺贈(包括遺贈)したり、特定の財産を遺贈(特定遺贈)したりするものと思われがちですが、受遺者に一定の義務を負わせる遺贈(例えば、遺言者の配偶者に配偶者が亡くなるまで毎月一定額の支払義務を課す遺言など)もあります(1002)。