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5 相続放棄問題 相続財産の管理責任

菊池捷男

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テーマ:令和時代の相続法

5 相続放棄問題 相続財産の管理責任

【条文】
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
(相続財産の管理)
第918条 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
(相続財産法人の成立)
第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。


【解説】
相続放棄をした者に、相続財産の管理義務があるかについては、あまり論じられませんが、被相続人の債権者あたりから、相続放棄をした者に、種々、義務なき行為を要求されている現実がありますので、解説しておきます。
(1)法940条の責任の責任
この責任は、相続放棄をした相続人がたまたま被相続人と同居していたなどから相続財産を事実上管理していた場合で、かつ、その者が相続放棄をしたことによって、次の順位の相続人が相続をすることになったとき、という極めて限定された場面が出来(しゅったい)したときに限り、その管理を継続する義務があるというものです。
しかも、その義務は、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」すれば足りるもので、「善良な管理者」としての注意義務ではありません。せいぜい紛失しないように気を付ける程度の義務でしかないのです。
(2)一般的な管理責任
それは、法918条ただし書にあるとおり、相続放棄をした者にはありません。
(3)では相続放棄後の相続財産の管理は誰がするのか。
それは、第951条を受けて第952条により、相続財産管理人を選任してその相続財産管理人がすることになります。

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