従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
1 金融機関の統合と公取委
長崎県で融資シェア最大を誇る十八銀行と、同県での融資シェアが2位の親和銀行が、経営統合をする合意をしたのが、2016年2月のことです。
この二行の長崎県内における金融機関の融資シェアの合計は80%弱もあります。
ここから、両行の経営統合がなされると、他の金融機関との競争が制限されるのではないかという懸念が生じました。
すなわち、公正取引委員会が、両行の統合に“待った”をかけたのです。
公取委は、両行に対し、私的独占状態を解消する手段を採るように、もしその方法を採らないまま経営統合手続きを進めるようであれば差止命令を出すと、警告したのです。
2 金融庁から公取委に異論をいう
公取委のこの態度に異論を唱えたのは、金融庁です。
金融庁は、金融機関の経営健全化を名目に、金融機関の経営統合を進めたいと考えている官庁ですので、その立場からの異論ですが、この異論の提起には、公取委の専権に属する所管事項に、他の官庁が横やりを入れたという感は否めません。法律論、組織論として一考すべき問題なのでしょう。
3 公取委案を受け容れる
このケースは、両行が、融資債権の一部合計約1000億円を、他の金融機関に譲渡して、県内における融資シェアを約65%に下げることで、公取委の了解を得、統合が実現することになりました。公取委の言うことが通ったということになります。
ただ、シェア80%をシェア65%に落としたという数字だけを見ますと、妥協の産物かもしれません。
いずれにせよ、統合の合意の時からいえば、2年半以上の期間が経過した後のことです(日経新聞2018年8月1日版「長崎の地銀統合承認へ」)。
4 課題
この問題は、国の機関相互間に統一的な考えがないことを露呈しました。
日経新聞2018年5月24日版の「長崎が動かす競争政策の見直し」によれば、この問題を契機に、近く政府が、政府全体を横断した、競争政策見直しの協議会を発足させることを報じました。