ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
コーポレートガバナンス・コードの策定と実施、その後3年間の運用の実態、そしてアメリカ資本の要求を受け入れた改訂の中身を見る限り、これからの上場会社の経営については、次のことが予測されます。
⑴ 株主提案の増加とそれに賛成する株主の増加
実例も出てきています。三井住友信託銀行は、前年は株主提案の全部に反対していたのが、今年の1~3月にあった株主総会では、株主提案の53%に賛成しています(2018年5月25日の日経新聞から)。
*株主(ここでは「もの言う株主」。つまりは内外の機関投資家、特にアメリカの機関投資家)の提案の多くは、増配ですので、これからは、増配する上場会社が増えてくると思われます。
⑵ 安定株主が存在しなくなる
いわゆる持合株式の解消は、コーポレートガバナンス・コードが強く訴えていたことですが、改定版はそれを一段と強める内容になっています。
このことから、経営者の保身に役立ってきた持合株式、つまりは安定株主といわれる存在はやがてなくなるものと思われます。
*上場会社の経営陣は、成果を出さないと再任されなくなるなど、今までより不安定な身分になっていくと思われます。
⑶ 敵対的買収防衛策の廃止 → 企業買収が増える → 株価が上がる
上場会社が敵対的買収策の廃止に動いてきました。そのような動きを見せる会社の株価が上がっています。
実例としては。昨年防衛策を廃止した日本瓦斯の株価が1年間で6割も上昇したこと、また、帝人や阪急阪神ホールディングスも企業買収防衛策を廃止した後株価が上昇したことが報じられています。
*なお、今後、改訂後のコーポレートガバナンス・コードに後押しされて、上場会社に対する買収攻勢が起こってくると思われます。
⑷社外取締役の増加
コーポレートガバナンス・コード策定持は最低2名の社外取締役が求められていましたが、改定版では、取締役総数の1/3以上に増やされています。 将来的には、アメリカ型の指名委員会等設置株式会社なみに、上場会社の取締役総数の過半数は社外取締役にすることが求められるものと思われます。
現実に、多くの上場会社が社外取締役を置くに至っております。
⑸ 取締役の選任権と取締役の報酬額の決定権が、社外取締役に握られる
現在、アメリカ型の指名委員会等設置会社は、社外取締役が過半数を占める指名委員会によって、会社の経営陣が決められ、取締役の報酬は報酬委員会によって決められていますが、コーポレートガバナンス・コードは、他の機関設計をしている会社(監査役会設置会社と監査等委員会設置会社)にも、任意の諮問機関として、指名委員会や報酬委員会類似の委員会を置くことを、求めていますので、やがて、上場会社の多くは、それに従った委員会を置くことになると思われます。
*そうなりますと、会社の支配者が現在の経営陣から、社外取締役に代わる可能性がでてきます。
⑹もの言う株主の力が強くなる
以上⑴から⑸までの変化は、すべて、「もの言う株主」すなわち、内外の機関投資家の要求により受け入れたものばかりです。これからは、機関投資家の発言力は一段と強まるものと思われます。
⑺ ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資が増える
これは、コーポレートガバナンス・コードの第二の基本原則が力を入れている部門です。ESGに投資する上場会社の株価が、他の会社に比べ、相当程度上昇していることも報じられています。
*この部門では、他にも女性の取締役を増やすことを推奨していますので、上場会社では、女性取締役も増えるであろうと思われます。