ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
3 会社法の特徴
平成17年制定された会社法は、国会での審議で多くの付帯決議がなされた。そのうち重要なものとしては、
①取締役の会社に対する責任が過失責任(過失がある場合に責任が生ずる)になったことにより、株主、会社債権者保護の観点から、会社内部の適切なコーポレートガバナンスが確保されるよう周知徹底し、必要に応じ会社に対する取締役の責任のあり方を見直すこと、
②拒否権付株式(黄金株)については、これが経営者の保身に濫用されないように、これを制限するなどの法的措置を含めて検討すること、
③敵対的企業防衛政策の導入・発動については、経営者の保身を目的とする過剰な内容にならないように、その際、株主に関与させるなどの指針を作ること、
④株主代表訴訟制度が株主全体の利益、会社のコンプライアンスの維持に資することにかんがみ、必要があれば、さらなる改善も検討すること、
⑤会社設立時の出資額規制の撤廃による起業家のモラル低下、会社形態を悪用したペーパー・カンパニーの濫立がないよう注視し、必要であれば対応措置を検討すること
などがある。
これらが何を物語るかといえば、
①は、コーポレートガバナンス・コードの策定に道を開くものになっていること(事実、平成27年6月1日に金融庁と東京証券取引所が協働で日本版コーポレートガバナンス・コードを策定し、平成30年5月に改訂した。)、
②は、経営者の保身に目を光らせようとしていること(これはコーポレートガバナンス・コードでも重要政策になっている)、
③は、敵対的企業買収が増えていくこと、経営者の保身のための買収防衛策は許さないとするのが立法者の意思であること、
④は、株主代表訴訟は歓迎されるべきこと(事実、以後、上場会社の不祥事が明らかになると、ほとんどのケースで株主代表訴訟が起こされるに至っている)、
⑤は、資本金が1円あれば、会社の設立を可能にしたこと
である。
このうち②及び③に関して、施行の延期がなされた条文がある
すなわち、新会社法は、「対価の柔軟化」の名の下、吸収合併等の場合の対価を、株式に限らず現金その他の財産でもよいとした。これは、旧商法下では、その対価は原則として吸収会社の株式に限定されていたこととは違う点である。
これにより外国企業による、三角合併を利用しての、日本の会社の買収が増えると考えられたことから、わが国の会社がこれに備えるため、敵対的企業買収防衛策を構築するための準備期間として、これに関する条文だけ施行が1年延期されたのである。
このことから分かることは、立法者は、敵対的企業防衛策をあらかじめ定款に定めることを認めたことである。
なお、三角合併とは、吸収合併をする会社が吸収合併される会社の株式を取得する対価に、第三者会社(多くは吸収会社の親会社)の株式を交付する方法である。