従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
1 新会社法の制定の理由
平成17年に単行法としては、初めて「会社法」が制定された。
その理由は、多岐にわたるが、①旧商法がカタカナの文語体で記載されていたので、読みやすい平仮名の口語体にするため、②過去の「商法」第二編で規定された条文が、その後何度も議員立法による改正により整合性がとれなくなっていたこと、また、③枝条文が増えたこと(旧商法280条は、枝条文が39にも増えていた)、④「商法」以外にも「商法特例法」があり会社法といえる法律が複数の法律を見ないと分からなくなっていたこと、⑤社会経済情勢の急激な変化に対応するためそれまでの各種制度の見直しも必要になってきたことなどである(詳細は、江頭憲治郎「新会社の制定の意義」ジュリスト1295号2頁)。
では、新たに制定された単行法である「会社法」は、これら①から⑤までの問題点をすべて解決したかというとそうでもない。③の枝条文はなくなったが、今度はやたら、①条文のセンテンスが長く、カッコだらけになり、②条文の数も旧商法会社編(52条~499条)から倍以上(1条~979条)になった。結局、会社法が一般の企業人が読んで分かりやすくなったかというと、かなり疑問符がつく。