従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
1 パワーハラスメントの定義と判断基準
パワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」(厚労省平成24年3月15日「職場のパワーハラスメントの予防解決に向けた提言」)とされています。
ここから、パワーハラスメントの判断基準は、
①当該行為が職場内の優位性を利用して行われたものか,
②当該行為が業務の適正な範囲を超えて行われたものか,
③当該行為が精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化する行為といえるか、
になります。
2 パワーハラスメントといわれるものが不法行為を構成する場合
東京地方裁判所平成24年3月9日判決は、「パワーハラスメントといわれるものが不法行為を構成するためには,質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。したがって,パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係,当該行為の動機・目的,時間・場所,態様等を総合考慮の上,「企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が,職務を遂行する過程において,部下に対して,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて,通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為」をしたと評価される場合に限り,被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成する」と判示していますので、会社又は法人内で、パワーハラスメントがあったかなかったかを調査する場合は、同判決を基準とすべきでしょう。
考慮要素は、
ⅰパワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係,
ⅱ当該行為の動機・目的,
ⅲ時間・場所,
ⅳ態様等になるでしょう。
3 パワーハラスメントの典型的な行為類型
上記「職場のパワーハラスメントの予防解決に向けた提言」においては,職場のパワーハラスメントの典型的な行為類型として次の6類型が挙げられていますので、この各類型に該当するか否かも、調査対象になり、かつ、判断要ります。
①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)