ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
1 構成
⑴位置づけ
コーポレートガバナンス・コードは、我が国の場合、直接的には、東京証券取引所が、上場規程の内容とした2015年(平成27年)6月1日「コーポレートガバナンス・コード 」(以下「本コード」という。)をさすが、これは、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための企業統治指針というべきものである。本コードの基本原則の中に、「上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため・・・」と枕詞を置いていることからも明らかである。
⑵法的義務か?
本コードの内容(原則とされているもの)のほとんどは、①「・・・すべきである」②「・・・・すべきでない」③「・・・に努めるべきである」という表現形式になっているように、強制でないことを示すとともに、上場会社に適したガバナンスは、会社ごとに判断すべきものとしている。
なお、上場会社によっては、実施することが適切ではないと判断する「原則」については、実施しないでもよいが、その場合は、それを「実施しない理由」を説明する責任が課されている(これは「プリンシプルベース・アプローチ」といわれる)。
⑶抽象的な表現が多い
本コードでいう原則は、多くの場合、抽象的表現でなされている。したがって、どこまでのことをすれば、その原則を実施した(コンプライした)といえるかについては、一義的明確性はない。実施したかしていないかの評価は、すべて当該会社の判断に任されている。これらの点においては、後述のスチュウワードシップ・コードも同様である。
⑷ 適用対象の会社
本コードが適用される上場会社は、一部上場、二部上場、マザーズおよび上場会社NASDAQであるが、本コードの「原則」すべてについて、「コンプライ・オア・エキスプレイン」を求められるのは、一部上場と二部上場である。東証の調査によれば、一部上場と二部上場の会社の中で90%以上の「原則を」受け入れている(コンプライしている)会社が大半になっていることからすると、今後、上場していなくとも、本コードは、公開会社(株式の全部につき譲渡制限をしている会社ではない会社)経営者が遵守すべき行動指針になっていくことが想定される。
⑸ 基本原則と原則と補充原則
本コードは、5つの基本原則とその下に置かれた「原則」と「補充原則」なら成っている。それらの合計は73項目に上る。