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コーポレートガバナンス・コード⑤ まとめと今後の課題

菊池捷男

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テーマ:会社関係法

1  コーポレートガバナンス・コードは、上場会社が守るべき準則ないし規範
 東京証券取引所が2015年6月1日に制定した「コーポレートガバナンス・コード」は、副題が「~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」とされていることからも、また、「コーポレートガバナンス・コード」の定義を「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。」と定めていることからも、さらに、その立ち位置が、東証の有価証券上場規程の別添になっていることからも、上場会社の規範ないし指針であることは明らかです。

 その内容は、上場会社は、株主の権利を認め(基本原則1)、株主以外のステークホルダーと適切な協働をなし(基本原則2)、適切な情報開示と透明性を確保し(基本原則3)、取締役会は収益力と資本の効率化を図り(基本原則4)、そのために独立社外取締役を2名以上選任し(原則4-8)、株主と建設的な対話をすること(基本原則5)などが、規範として求められているのです。

 なお、コーポレートガバナンス・コードの受入れ状況についての、上場会社から提出されたコーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)の集計結果が公表されていますが、これによりますと、2017年3月時点では、全73原則をすべて受け入れている(コンプライ)している会社は、1部上場では24.2%、その90%以上をコンプライしている会社は65.0%でした。2部上場では、全原則を受け入れている会社は、3.6%、90%以上受け入れている会社は63.8%となっています(東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書 2017年3月)。
その後、受け入れる原則を増やす会社は増加していることが、2017年9月5日東証のコーポレートガバナンス・コードへの対応状況の集計結果に出ています。
これは、同コードを策定したのが金融庁と東証であることによることが大きいといわれてます。なお、上場会社といっても、業種間で受け入れ状況にばらつきがありますが、特に、金融庁の監督を受ける銀行・保険会社の成績が良いようです。

2 スチュワードシップ・コードは、上場株式を保有する法人投資家(銀行、保険、年金基金等)に求められる規範
これは一昨日のコラムで解説したところです。

3 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードは車の両輪
コーポレートガバナンス・コードは、上場企業が自ら、ガバナンスを磨き、長期的な企業価値の拡大を目指すことを期待しているもの、スチュワードシップ・コードは、機関投資家の側から、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の拡大を促すためのものですので、両コードは、上場会社の企業価値の向上を促す車の両輪の機能を有している、といえましょう。

4 建設的対話が求められる時代
 両コードは、株主と会社との建設的対話を要請しています。この対話は、エンゲージメントといわれますが、複数の機関投資家が協働して対話する場合は、「集団的エンゲージメント」といわれます。
これからは機関投資家が(建設的な)「物言う株主」に変貌し、投資先会社の経営監視機能を強化し、株主およびステークホルダーへの利益還元を後押しすることが期待されるようになってきています。
機関投資家には、もともと専門的知識、経験があるので、機関投資家の議決権の行使の方針次第では、会社経営が様変わりする可能性を秘めているといっても過言でないでしょう。


5 これからの課題 政策保有株(持ち合い株)の解消
2018年1月30日の日本経済新聞の記事「一目均衡」には、上場会社が保有する政策保有株式(持ち合い株式)の弊害は大きいと指摘されたうえ、持ち合い株を「日本の株式市場に残った最大の岩盤」との識者の言葉も紹介していますので、マスコミ、というより世論というか、一般投資家というかは、上場会社の経営者に対し、政策保有株の解消その他の株主重視経営への転換を強く求めているという感じがします。
 なお、政策保有株が、敵視されるのは、その株式は、会社の現経営陣の応援団と目されることからです。言わば、物言わぬ株主ですから、物言う株主の発言力がその分減殺されることになるからだと思われます。
いずれ、我が国の上場会社は、持ち合い株の株主からの支援は受けられず、物言う株主からの忌憚のない政策提言を受けて、会社価値の最大化を求められる、厳しい試練に曝され、真に有能な経営者のみが生き残れる時代が到来するのかもしれません。
そうなったときに、初めて、会社の不祥事(会計不祥事)も、抑制されるのかもしれません。

以上で、コーポレートガバナンス・コード①から⑤までの連載コラムを終えます。
このコラムにおける文章は、弁護士菊池捷男の手になるものです。したがって、その判断部分は、菊池の意見ですが、内容としての情報の多くは、弁護士後藤紀一(広島大学名誉教授・会社法)の提供によるものであることを、付言しておきます。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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