景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例
1 軸足が、会社の不祥事の抑制から、会社経営の積極性・効率性へ移る
会社の不祥事の根絶は無理でも、最大限その可能性の芽を摘むことは、資本主義経済を維持していく上で必要なことですが、これまでのコーポレートガバナンス・コードが、不祥事抑制に重きを置いていたのと違って、リーマンショック後、会社経営の積極性・効率性を求める考え方が表れるようになりました。これがスチュワードシップ・コードの考えです。
2スチュワードシップ・コードの意味
スチュワード(steward)という英語は、執事、財産管理人等を意味し、シュチュワードシップ・コードとは、顧客から拠出された資金を上場株式などに投資して運用・管理する法人投資家(銀行、保険、年金基金等)に求められる規範のことをいいます。
これら法人投資家は、一般大衆から資金運用の委託を受け、上場株式などに投資していますので、投資した上場会社の持続的成長と中長期的な企業価値の拡大に資するように、①会社と建設的な話し合いをして議決権を行使するとともに、②機関投資家自らも、自己の顧客・受益者に対して、利益相反行為による不利益を及ぼさないようにすべき等の規範ないし行動指針を持すべきだという考え方です。
3 物言わぬ株主から物言う株主への変貌
もとより、機関投資家は、運用資金額が大きいため、金融市場に占める存在感や議決権を行使した場合の影響力は、個人投資家に比べ格段に大きいものがあるのですが、これまで、投資対象会社の経営には口を出さない「物言わぬ株主」でした。しかし、これでは、資金運用の受託者としての責任を果たしたとはいえず、また、投資対象の会社の中長期的発展にマイナスの影響を与える観点から、反省が求められたものなのです。
4 我が国のスチュワードシップ・コード
スチュワードシップ・コードは、リーマンショックの反省を機に、2010年にイギリスで策定されたことに始まったとされていますが、わが国でもこれを参考に、政府の「日本再興戦略」2014年において、「機関投資家が、対話を通じて企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の拡大を促すなど、受託者責任を果たすための原則(日本版スチュワードシップコ ード)」を取りまとめることを決定し、同年、金融庁が策定しました(2014年)。
スチュワードシップ・コードは、日本語では、「責任ある機関投資家の諸原則」、「受託者責任を果たすための原則」と訳されていますが、ここに述べられた考え方は、いまや世界共通のものであり、アジアの新興国でもこれを採用する国が増えているようです。特に、我が国の国益という観点からみても、海外の機関投資家に対して、日本株式市場を魅力的なものとするために不可欠なものになっています。