出資比率は絶対ではない(出光興産事件)
「のう、後藤!株式会社が設立されて、年月が経過すると、株主がやたらに増えるだろう。それら株主の中には、会社からの通知が届かないとか、長期にわたって剰余金の配当を受領していないという株主がいるわなあ。これら、いわゆる所在不明株主からは、強制的に株式を買い上げる制度ができたと聞いているが、具体的にはどんな制度なんだい。」
「会社法の196条から198条にわたって、規定している、「所在不明株主の株式売却制度」という制度だよ。その概要はと言うと、
①会社から発送される通知・催告が株主に5年間到達しなかったこと、及び
②その株主が継続して5年間、剰余金の配当を受領していないことの2要件を満たす場合だが、その場合、当該株式会社は、その株式を競売にかけることができる、という制度だよ。
もっとも、競売に代えて、相場のある株式であれば相場価格で、また、相場のない株式については裁判所の許可を得て任意で売却することもでき、会社がその株式を買うこともできるのでね。これにより、所在不明株主を減らすことが可能だよ。」
「その手続はどうするんだい?」
「簡単さ。①会社が3か月以上の異議申立期間を定めて、異議申立手続を行うだけだよ。その場合で、異議申立期間内に異議申立がなったときは、異議申述期間満了時に、所在不明株主の株式は無効となるんだ。簡単だろう。」
「では、株式の売却代金は、どうなるんだい。」
「売却代金は、債権者(株主)の所在が不明であることを理由に、売却代金を供託できるので、そうすればよいのさ。」
「う~ん。そうすると、株式会社も助かるなあ。」
「そうだ。所在不明株主がいて困っている株式会社は、それを積極的に行うべきだろうな。」
参照:会社法
(株主に対する通知の省略)
第196条 株式会社が株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達しない場合には、株式会社は、当該株主に対する通知又は催告をすることを要しない。
2 前項の場合には、同項の株主に対する株式会社の義務の履行を行う場所は、株式会社の住所地とする。
3 前二項の規定は、登録株式質権者について準用する。
(株式の競売)
第197条 株式会社は、次のいずれにも該当する株式を競売し、かつ、その代金をその株式の株主に交付することができる。
一 その株式の株主に対して前条第1項又は第294条第2項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの
二 その株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったもの
2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が2人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 株式会社は、前項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
(以下略)