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無効行為の転換法理 遺言としては無効だが、死因贈与契約としては有効

菊池捷男

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テーマ:相続判例法理

1 広島高等裁判所平成15年7月9日判決
 同判決は、
「 死因贈与は,遺贈と同様に死亡が効力発生要件とされているため,遺贈に関する規定が準用されるが(民法554条),死因贈与の方式については遺贈に関する規定の準用はないものと解される(最判昭和32年5月21日)。したがって,遺言書が方式違背により遺言としては無効な場合でも,死因贈与の意思表示の趣旨を含むと認められるときは,無効行為の転換として死因贈与の意思表示があったものと認められ,相手方のこれに対する承諾の事実が認められるときは,死因贈与の成立が肯定されると解せられる。
 これを本件についてみると,前記認定のとおり,亡Dは,死期が迫っていることを悟り,死後自己所有の財産を,敢えて養子である原審原告を除外して,実子である原審被告らに取得させようと考え,本件遺言書を作成したのであり,その目的は,専ら,死亡時に所有財産を原審被告らに取得させるという点にあったこと,遺言という形式によったのは,法的知識に乏しい亡Dが遺言による方法しか思い付かなかったからであり,その形式にこだわる理由はなかったこと,そのため結局遺言としては無効な書面を作成するに至ったこと,亡Dは,本件遺言書の作成当日,Fを介し,受贈者である原審被告らにその内容を開示していること等の点にかんがみれば,本件遺言書は死因贈与の意思表示を含むものと認めるのが相当である。
 そして,前記認定のとおり,原審被告Bは,本件遺言書作成には立ち会ってはいなかったものの,その直後に亡Dの面前でその内容を読み聞かされ,これを了解して本件遺言書に署名をしたのであるから,このときに亡Dと原審被告Bとの間の死因贈与契約が成立したといえる。また,原審被告Cは,本件遺言書に署名することはなかったものの,本件遺言書作成日に,病院内で,Fから本件遺言書の内容の説明を受け,これに異議はない旨述べた上,亡Dを見舞い,その際にも本件遺言書の内容に異議を述べることもしなかったのであるから,亡Dに対し,贈与を受けることを少なくとも黙示に承諾したものというべきであり,このときに,亡Dと原審被告Cとの間の死因贈与契約が成立したといえる。
 以上によれば,原審被告ら主張の平成11年1月17日付死因贈与契約の成立が認められる。」

と判示したのです。

2 死因贈与契約の成立要件
 無効な自筆証書遺言によって、死因贈与契約が成立したとされる要件は、
① 受贈者が、遺言者が書いた遺言署の内容を了解して、遺言書に署名をしたこと、又は、
② 遺言書作成日に,遺言者から遺言書の内容の説明を受け,これに異議はない旨述べたことなどにより、遺言者に対し、贈与を受けることを黙示的に承諾したこと
です。

3 最高裁判所第二小法廷平成平成28年6月3日判決も、この法理を認めています。

 同判決は、主位的請求は、自筆証書遺言によって、予備的主張としては、死因贈与契約を締結したと主張して,所有権に基づき,所有権移転登記手続を求めるなどしている事案ですが、同判決は、自筆証書遺言が押印に代えて花押を書いていることから、遺言は無効だと判示した後、予備的主張について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すことにしたのです。
 

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菊池捷男(弁護士)

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